「今月の生活費、あと三万だけ欲しいの」 食卓に額を擦り付けた遥に、田舎の介護士である夫・誠治はあっさりと言い放った。「じゃあ一千万、渡しておくね」。 十一年の貯金百八十万円を実家に奪われ、美人の姉の身代わりとして寒村へ嫁がされた遥。手元の残高はわずか二万八千円、極貧の果てに絞り出した懇願だった。だが、十四年落ちの軽自動車に乗る質素な夫が開いた古い金庫には、確かに「10,000,000円」と印字された通帳が眠っていた。 なぜ一介の介護士がこれほどの大金を動かせるのか? 呆然とする遥の前に、夫は湯呑みを差し出して静かに告げる。「君に見せたい場所があるんだ」――。