"身代わり花嫁と一千万円の通帳" 第23話
……その言葉が、い鉄の杭みたいに俺の胸に突き刺さって、どうしても抜けなくなったんだ。誰かに世話を受けることは、決して迷惑なんかじゃない。老いることは罪じゃない。……誰かに支えてもらうことを申し訳ないとわせるような介護は、絶対に違っているって、の底から叫びたかった」
シズさんは、誠治さんが歳の、施設のでの涯を閉じた。
誠治さんはそののうちに製材所を退職し、介護の世界へとび込んだ。無で資格を取り、現の過酷な現実と向きい続け、歳のに、この町に「ごめんねと言わなくていい所」を作るためにちがった。それが、「野の瀬の」の原点だったのだ。
話を聞き終えた私は、涙で滲む界のまま、再び墓に向かってくをげた。
そして、段に座る誠治さんの隣に寄り添い、震える声で告げた。
「……私の祖母も、同じでした」
誠治さんが、驚いたように私を見つめた。
「私が、の世話をしたり、夜にオムツを替えたりするたびに、祖母はいつも泣きそうな顔をして、『遥ばっかりに、ごめんねえ』って繰り返していました。私はその度に、『いいのよ』って笑ってごまかしていたけれど……祖母はきっと、くなる最の瞬まで、自分は族のお荷物なんだって、申し訳なさを抱え込んだまま旅っていったんだといます。
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……当の私には、その申し訳なさを消してあげるだけの力が、ありませんでした」
誠治さんは何も言わず、ただ静かに、温かな線で私の言葉を受け止めてくれた。
「はね、ではきられないんだよ、遥さん」
誠治さんはちがり、墓の周りに落ちていた松葉をで払いながら、穏やかに言った。
「赤ん坊の頃は誰かの胸に抱かれて育ち、老いて体がかなくなれば誰かのを借りてきる。支える側だって、いつかは必ず支えられる側になるんだ。……俺がこの会社をきくできたんじゃない。歯をいしばって現を支えてくれる職員がいて、信頼してを委ねてくれる利用者さんがいて、温かく見守ってくれる商のみんながいて……俺はみんなにかされているだけなんだよ」
のを浴びながら町を見渡す夫の横顔を見つめながら、私ので、このに対するいが、単なる「恩」や「夫」という枠組みを超えて、魂のい所で共鳴しっているのをじていた。
その週の曜、誠治さんの公休に、私は彼が運転する軽自の助席に乗せてもらった。
部座席には、「野の瀬の」の厨で毎朝炊きげられた、鮮やかなお弁当の入った保温箱が個、然と並べられていた。町にきりで暮らす独居齢者たちの自宅へ、直接配に回るのだという。
「お弁当を届けることだけが目じゃないんだよ」
を慣れたハンドルさばきで登りながら、誠治さんが教えてくれた。
「直接顔を見て、『調子はどうですか』って言、言言葉を交わす。そうするとね、顔が悪いとか、昨の分のお弁当が付かずで残っているとか、ポストに聞が溜まっているとか……さな異変にすぐに気づけるんだ。それが、この町の命綱なんだよ」
の腹にある古い農に暮らす、田さんという暮らしのおじいさんは、軽トラのエンジン音が聞こえるや否や、縁側まで杖をついててきて、「おお、倉田君! 待っとったぞ!」と満面の笑みを浮かべた。
誠治さんは「田さん、今は俺の妻の遥も緒です」と紹介してくれ、おじいさんのむくんだ首の腫れ具を優しく確かめ、血圧の薬をんだかどうかを入りに確認した。
「今のおかずのほうれん、百さんのとこだろ? 甘くて美いんだよなあ」
おじいさんが嬉しそうに目を細めると、誠治さんは自分のことのように嬉しそうに破顔した。
帰り、誠治さんは自分の個資産や会社の利益の使いについて、しずつ話してくれた。
彼は級に乗ることも、豪邸を建てることも、ブランド物をにつけることもしない。その代わり、得られた資をすべて、血の通った所へと循環させていた。
現で働く介護士たちの基本を業界平均より幅に引きげること。