"身代わり花嫁と一千万円の通帳" 第12話
に入ると、誠治さんはわざわざ自分の軽自を以運転して、私のむ台まで会いに来てくれた。
駅のロータリーに滑り込んできたい軽自は、塗装が焼けしてくなり、バンパーの端にさな凹みがある、お世辞にも派とは言えない古いだった。けれど、内は埃つなく綺麗に清掃されており、助席にはさな使い捨てカイロがつ、さりげなく置かれていた。
駅のファミリーレストランの片隅の席で、私たちは向かいって座った。誠治さんはボリュームのあるハンバーグ定を頼み、私は温かいきつねうどんを頼んだ。
事の半ば、誠治さんはに箸を置き、ナプキンで元を拭うと、私の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「急ぐ必はありません。……でも、俺は遥さんと、これからのを緒に歩んでいきたいとからっています」
私はうどんの汁の湯気を見つめたまま、い顔をげることができなかった。胸の奥から湧きがってきたのは、どうしてもにしておかなければならない、自分自の卑屈な真実だった。
「……倉田さん。私、本当は姉の代わりに来ただけなんです。源蔵さんが最初にお話しを持ってきたのは、美しくて華やかな姉の也の方でした。姉が嫌がって断ったから、私が押しされるようにして……」
広告
「っていますよ」
誠治さんは、私の言葉を遮ることなく、穏やかに、けれど揺るぎない力さを持って答えた。
「源蔵さんから、最初の経緯はすべて聞きました。……そので、俺は今、遥さんに会うためにここへ来たんです」
それ以の飾りてた弁や甘い言葉を、誠治さんはにしなかった。
けれど、その無骨な横顔と澄んだ瞳を見つめているうちに、私の胸の奥にあったたい氷が、音をてて解けていくのをじた。このは嘘をつかない。の目や世体ではなく、自分の目で物事の真実を見つめているなのだと、理屈を超えて理解できた。
私はくをげ、
「……よろしくお願いします」
と、さな声で答えた。
結婚が決まると、実での母のきは驚くほど素かった。
「嫁入りの支度には何かとおがかかるでしょう? 遥の今までの貯は、お母さんが責任を持って預かって管理しておくわね」
そう言って母は、私がの会社勤務で毎の料からコツコツと貯め続けてきた百万円の普通預通帳を取りげ、そのうちの百万円を、自分の座へと瞬で移し替えてしまった。
しかし、実際に私のために用された嫁入り具といえば、量販で買った物の羊毛布団組と、スーパーの特売で揃えられた茶碗と箸が膳、それに着替えを詰めるためのプラスチックの装ケースがつだけだった。
残りの百数万円というがどこへ消えたのか、私が問いただすことはできなかった。ちょうどその頃、姉の也が「通勤用に欲しかったの」と、真っ赤なピカピカのの軽自を嬉しそうに乗り回し始めたのを、私はただ黙って見つめることしかできなかった。
の終わりに、私は勤めた設備事会社を退職した。
最終の夕方、事務所で類の引き継ぎを終えた私に、社夫は封の包みを渡し、私のえた両を自分の温かい掌でぎゅっと包み込んでくれた。
「遥ちゃん、今まで本当によく頑張ってくれたわね。……あなたはね、誰よりもの痛みが分かる、優しい素らしい女性よ。奥へっても、どうか自分の幸せを番に考えて、堂々ときていくのよ」
夫のその温かい涙混じりの言葉に、私は々とをげ、事務所のドアをくぐった。
がけたの末、私と誠治さんは、のちらつく野の瀬町の役へ赴き、で婚姻届を提した。
華やかな結婚披宴などは切わなかった。誠治さんの古い平の座敷に、京から駆けつけた私の両親と、仲役の源蔵さんのだけが集まり、仕しの質素な幕の内弁当をつつく、ささやかな顔わせの事会をいただけだった。
姉の也は、「そのは事なフライトの訓練が入っているから」