みかん小説
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"身代わり花嫁と一千万円の通帳" 第2話

あの頃の私は、自分のという物語の主公が自分自であるなどとは、ほどもっていなかった。

私のである望は、父の信男と母の佳代、姉の也と私、そして父方の祖母であるフミの族だった。

父は台の役所に定まで勤めげた絵に描いたような真面目な公務員で、世体と所の評判を何よりもんじるだった。母の佳代は、庭内のすべての実権を握り、物事を自分のい通りにかさなければ気の済まない性格だった。

そして、その庭のには、いついかなるも姉の也が君臨していた。

姉が所を歩けば、すれ違う主婦たちが々に「まあ、望さんのところのお姉ちゃんは、まるでお形さんみたいにいわね」と黄い声をあげた。母はその度に誇らしげに目を細め、姉の着るには惜しみなくおをかけた。

に度のピアノの発表会のには、両親は朝から張羅を着込み、駅の価なで抱えきれないほどきな束を買い求めてホールへと向かった。台のでフリルのついたドレスを着て鍵盤を叩く姉の姿を、父は何枚ものフィルムを使ってカメラに収め、母は客席の最列で惜しみない拍を送り続けていた。

姉の誕がづくと、母は何もから駅の名な菓子にを運び、ショーケースので番きくて華やかなイチゴのホールケーキを予約した。

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居のテーブルにはご馳が所狭しと並べられ、父と母が声を揃えて姉のためにをった。

対して、私の誕はといえば、姉のケーキの残りがラップに包まれて蔵庫の隅に追いやられており、それを翌の夜に取りして、使い古しの細いローソクを本だけててをつける、そんなが何度あったか分からない。

幼い頃の私は、姉と自分とのに横たわるあまりにも公平な扱いの差に、胸を痛めて涙をこぼすこともあった。けれど、物がついた学の学にもなる頃には、諦めとともに、それが望という閉ざされた世界における絶対の掟なのだと理解するようになっていた。

母が私に向かって放つ言葉は、いつだって決まりきっていた。

「遥、あなたが代わりにやりなさい」

姉が曜の朝の町内会の斉清掃を「が荒れるから嫌だ」と突っぱねれば、母は私の背を押してゴミ袋と箒を持たせて送りした。姉が祖母の定期な通院の付き添いを「友達と遊ぶ約束があるから面倒くさい」と放りせば、私が学を退して、病院の待のい子で何も祖母の腰をさすりながら順番を待った。

学の、私が必に打ち込んできた吹奏楽部の県会のが、偶然にも姉ののピアノコンクールと完全になってしまったことがあった。

朝、居で楽器の入れをしていた私に向かって、母は鏡ので髪をえながら、振り返りもせずに言い放った。

「お父さんとお母さんは、也のコンクールにくからね。遥はでに乗って会へきなさい。あ、そうそう、帰りに病院の薬局によって、おばあちゃんの持病の薬を受け取ってきてちょうだいね。也に頼むわけにはいかないから」

そのの県会の客席のどこを探しても、私の族の姿はなかった。

演奏を終え、いユーフォニアムをケースにしまってトラックへと積み込んだ、私は制のスカートのままでバスを乗り継ぎ、夕暮れの民病院の薬局へ向かった。ずっしりとい祖母の湿布とみ薬が詰まった袋を両で抱え、満員の線バスの揺れに耐えながら帰宅した。

玄関の引き戸をけると、居からは楽しげな両親と姉の笑い声が溢れていた。テーブルのには、コンクールの入賞を祝う鮮やかな寿司の桶が置かれ、壁には速現像された姉の誇らしげな写真がてかけられていた。

私が会でどんな演奏をしたのか、結果がどうだったのかを尋ねる者は、そのに誰としていなかった。父は晩酌のビールグラスを傾けながら、聞の隙から私の顔を瞬だけ見て、こう言っただけだった。

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