「忘れ物したから帰るわよ」義母の葬儀の最中、妻は親族の冷視を浴びながら俺を無理やり連れ出した。 母の介護を押し付け、月五万円の出金を繰り返し、精進落としの席で遺産を貪ろうとする商社マンの義兄夫婦。彼らの見下しに耐え忍んできた妻と、十年前のある挫折で公認会計士の資格を封印したしがない経理マンの俺。 だが自宅の仏壇の奥、真鍮の古鍵で開いた金庫には、亡き義母が遺した録音テープと三十六ヶ月分の通帳、そして極秘の遺言書が眠っていた。 翌朝、胸ポケットのレコーダーを起動し、俺は追い詰められた義兄を見据える。 「正人さん、そろそろ数字の話をしましょうか」