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"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第19話

俺は公認会計士としての識を活かし、正の収から活費と治療費を差し引いた、現実な返済計画を作成した。 「万円。で、利息を含めて百万円を由の座へ返済してください。これでを打ちます」 正は震えるでペンを握り、誓約に署名捺印した。 「ありがとう……健太郎君。君は俺を警察に突きして、破滅させることだってできたのに……」 「それは、お母さんの望みではありませんから」 正はちがり、玄関でくをげた。 「健太郎君。俺は君を見くびっていた。経理の係なんてと見していた俺が、番惨めで愚かなだった。君は……俺なんかより、ずっと派な男だ」 夜ののへと消えていく正の背は、さかったが、議と憑き物が落ちたように穏やかだった。

それから週、俺は勤務先の経理部に呼びされた。 髪の佐々部が、温かい笑みを浮かべて枚の社内辞令を渡してきた。 「田君。君が公認会計士の資格を持っていること、そして今回の義母の件で見せた見事な財務調査の腕を、事を通じて本社役員会に報告させてもらったんだ」 「え……?」 「来期、グループ全体を統括する独した『内部監査』が設されることになった。その初代として、君を部待遇で迎え入れたいと、社直々の指名だ。

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与も現の倍くになる。どうだね、受けてくれるか?」 、自ら封印し、諦めかけていた。 義母が命を賭して引きしてくれた俺の力が、いもよらない形で評価されたのだ。 その夜、自宅で由に辞令を見せると、妻は涙を流してんでくれた。 「素らしいわ、健太郎さん! お母さんが、国からあなたの背を押してくれたのね!」 「ああ……お母さんのおかげだ。俺、もう度、数字の世界で戦ってみるよ」

季節は巡り、爽やかなが吹き抜ける頃。 俺と由は、しく建て替えられた義母の墓にっていた。 墓には、俺たちがを込めて選んだ言葉が刻まれていた。 『と恵に満ちた母 ここに眠る』 「お母さん。正さんは順調に更へのを歩んでいますよ」 俺は墓に柄杓でをかけながら報告した。 正は現、郊の賃万円の呂なしアパートにみ、ギャンブルを完全に断ち切るための自助グループに通いながら、毎遅れることなく万円の返済を続けていた。贅沢を捨て、質素に暮らすで、かつての傲さは消え失せ、謙虚で誠実なの男へとまれ変わりつつあった。 「お母さん……私からも、報告があるの」 由が恥ずかしそうに微笑みながら、俺の腕にそっとを寄せた。 「赤ちゃんが、できたの」 俺は息を呑み、目を見いた。

「ほ、本当かい……!?」 「ええ。先週、産婦科で確認したの。結婚目にして……お母さんが、私たちにしい命を授けてくれたんだわ」 墓に吹き抜けた柔らかなが、まるで義母が俺たちのを優しく撫でてくれたかのように、温かく頬を包み込んでいった。

妊娠ヶを迎えたある、俺たちのに正が訪ねてきた。 産として持参してくれたのは、菓子折りではなく、丁寧に面取りが施された、作りの製のガラガラだった。 「治療の環で、の作業療法を始めたんだ。……母さんの初孫になる子に、伯父として何か贈りたくてね」 器用だが、温もりに満ちたその玩具を受け取った瞬、由のお腹ので、トクンと力い胎が響いた。 「あ、赤ちゃんが蹴ったわ!」 「俺の声が、聞こえたのかなあ」 照れくさそうにを掻く正の笑顔を見て、俺たちはから笑いった。 義母が命を削って遺してくれたのは、や財産だけではなかった。過ちを犯した者を正し、傷ついた者を癒やし、再び結びわされた、真の族の絆だったのだ。

陣痛が始まってから、由は元気な女の子を無事に産した。 の義母の名から文字をもらい、『美優子(みゆこ)』と名付けた。 退院した、俺たちは美優子を抱いて、仏壇のに座った。 「お母さん。美優子がまれましたよ」

さなさなをいたり閉じたりしながら、美優子が微かにあくびをした。 遺のの義母は、これまで見たどの瞬よりも、誇らしげに、そして限りない慈に満ちた笑顔を浮かべていた。

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