"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第8話
由の顔から血の気がサーッと引いていくのが分かった。唇を固く噛み締め、悔しさに震える妻の肩に、俺はそっとを置き、指先に力を込めて支えることしかできなかった。
告別式の式分、参列者が式へと案内される、正が招きして俺を呼び止めた。 「おい、健太郎君。弔辞の件だけどさ」 「……弔辞、ですか? 式次第では、由が喪主として挨拶をすることになっておりますが」 「ああ、まだ言ってなかったっけ? 由じゃ荷がいだろうからさ、男であるこの俺が、遺族を代表して弔辞を読むことに変更したから。葬儀社の方にもさっき伝えておいたよ。やっぱり男親のいない佐藤の男として、俺が責任を持って母を見送るのが世体ってもんだろう」 「なっ……! そんな事なことを、事に何の相談もなく勝に決めるなんて!」 俺がわず声を荒らげると、正は笑を浮かべ、俺の胸元を差し指で突いた。 「相談? なんで妹の婿養子みたいな奴に相談しなきゃいけないんだよ。の程を弁えろよ、健太郎君」 俺は由を振り返ったが、彼女はうつむいたまま、たださく首を横に振るだけだった。これ以ここで騒ぎを起こせば、義母の葬儀そのものが台無しになってしまう。その苦渋の決断を察し、俺は拳を握りしめて耐えるしかなかった。
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厳かな鐘の音とともに告別式が始まり、読経が響き渡る、正は親族席の最列のど真んに踏ん反り返っていた。 そして司会者から弔辞のアナウンスが流れると、正は待ってましたとばかりにちがり、胸を張ってマイクのへとみた。 「……き母、佐藤美代子へ。私たち息子夫婦は、母さんの激のの最期を、このでしっかりと支え切ることができ、このない幸福をじております」 正の芝居がかった朗々たる声が、スピーカーを通じて式いっぱいに響き渡る。 俺の隣で、由の指先が喪のスカートを破れんばかりに握りしめられていた。 「母の晩は、私たち夫婦が注ぎ続けた惜しみないに包まれ、真にらかで幸せなものであったと確信しております。特にこの数、私は激務のを縫い、毎のように母の病へを運び、そのを握り励まし続けてまいりました……」 嘘だ。すべてが汚らわしい嘘の塊だった。 毎のように通うどころか、に度、義母が眠っている帯にふらりと現れては、「寝てるならいいや」と数分でちっていた男が、何をぬけぬけと語っているのか。 りで界が赤く染まり、俺の全が刻みに震え始めた。だが、ここは葬儀のなのだ。参列者たちの、席をってそのマイクを奪い取るわけにはいかない。
義母を侮辱するその茶番劇を、俺たちはただただ耐えて聞き続けるしかなかった。 「……母よ。あなたが遺してくれた気い族の絆を、私たち男夫婦がとなって、これからも切に受け継いでいくことをここに誓います」 弔辞が終わり、正が々と礼すると、事をらない参列者たちからパラパラと銘を受けたような拍が沸き起こった。正はさも誇らしげな笑みを浮かべながら、悠然と席へと戻ってきた。俺たちの胸には、言いようのないヘドロのようなだけが渦巻いていた。
やがて般焼が始まり、い参列者の列ができた。 正と直子は、焼を終えた参列者ひとりに駆け寄り、まるで選挙運の政治のように両で握を交わしてを振りまいていた。 「本はご忙の折、誠にありがとうございました! 母も国でさぞんでいることでしょう! 息子として、謝のに堪えません!」 その々しい景をめた目で見つめていた、義母の代からの親友である田さんが、涙で目を腫らしながら俺たちのへと歩み寄ってきた。 「健太郎さん、ゆかちゃん……本当にお疲れ様でしたね」 田さんは由の肩を優しく抱きしめ、温かい涙をこぼした。 「美代子さんね、病へお見いにくたびに、いつもあなたたちのことを自していたのよ。
『健太郎君と由がね、毎仕事帰りに顔を見せてくれるの。