"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第18話
私は母・佐藤美代子より、百万円を借用いたしました。以内に全額返済することを誓約いたします。佐藤正 印』 「お母様はね、息子さんの着に気づいた際、彼を問い詰めてこの借用をかせたのです。『これをいて返済するなら、刑事事件にはしない』と。息子を罪に落としたくないという親と、万がの際に法な返済義務を確定させるという恵の、両方を兼ね備えた措置でした」 俺は目がくなるのを禁じ得なかった。 義母は、愚かな息子をどこまでも守りながら、同に、決して甘やかすことなく、逃げを塞ぐための楔を打ち込んでいたのだ。 「そして、もうつ。これが使われずに済むことを、美代子様はから祈っておられました」 田弁護士が差ししたもうつの封筒には、『正の勤務先への告発状』とかれていた。商社における管理職の正が社会にどれほどい処分を招くか、義母は徹底に調べげたで、最の抑止力として弁護士に預けていたのだ。 「遺産の総額は、預が百万円、実のマンション売却見込み額が千万円、命保険が千百万円。計で約千万円になります。美代子様は、健太郎様であれば、この財産を最も正しく、族のために使ってくれると信じておられました」
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千万円。質素に暮らしていた義母が、これほどの資産を遺してくれていたとはにもわなかった。義母の俺に対する絶な信頼のみに、が引き締まるいだった。
法律事務所をにした翌の夕刻、正がで俺たちの自宅を訪ねてきた。 インターホンをけると、そこにっていたのは、いつもの級スーツ姿ではなく、くたびれたポロシャツに褪せたチノパンを穿いた、さく丸まった男の姿だった。顔は気で、無精髭が伸び、かつてのエリートの面はどこにもなかった。 「……がってください」 俺がリビングへ招き入れると、正は玄関のたたきに膝をつき、そのままに額を擦り付けて座した。 「健太郎君……由……本当に、申し訳なかった……! 俺は、として最のクズだった……!」 俺は静かに正の肩にを置き、仏壇のへと案内した。 美代子さんの遺のに座った正は、肩を激しく震わせながら、嗚咽を漏らして泣き崩れた。 「母さん……番親孝をしなきゃいけない息子の俺が、母さんを裏切って、おを盗んで……本当にごめんなさい……許してくれとは言えない……でも、本当に申し訳なかった……!」 額を何度も畳に打ち付ける義兄の姿を見て、俺の胸ののりは、静かな憫へと変わっていった。、正を見抜けずにすべてを失い、自暴自棄になっていたかつての自分の姿となったからだ。
「……直子さんは、どうされたのですか」 由が静かに尋ねると、正は顔をげ、涙とでぐしゃぐしゃになった顔で答えた。 「……全部、話したよ。母さんのを盗んでいたことも、ギャンブルの借も。……そしたら、『そんな借まみれの犯罪者とは緒にいられない』って言われて、そののうちに荷物をまとめて実へ帰っていった。婚届も……置いていかれたよ」 正の声は、枯れ果てていた。 共財産だった級マンションもも、慰謝料代わりに直子に持っていかれ、正の元に残ったのは、百万円の借と、最限の着替えだけだったという。 「俺……母さんがどこまでってるのか、ずっと怖かったんだ。でも、俺を警察に突きさないために、わざわざ借用なんて形にしてくれてたなんて……俺は、母さんのを、蹴にして踏みにじっていたんだな……」 俺は田弁護士から預かっていた自の借用と、正式な遺言の写しを正のに置いた。 「正さん。お母さんは、あなたを見捨てたわけではありません。しているからこそ、これ以罪をねさせないために、厳しい試練を与えられたのです」 「……ああ……分かってる……に染みて、分かったよ……」 「本気でやり直す気があるなら、まず専の医療関でギャンブル依症の治療を受けてください。そして、残った借は債務理をい、の丈にった活ので、お母さんから借りた百万円を返済してください」