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"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第17話

直子が狂ったように正に掴みかかり、醜い夫婦喧嘩が勃発した。俺はややかにその景を見つめながら、ICレコーダーの度を調した。 「正さん。お母さんは、最期まであなたを信じようとしていました」 「……え?」 「あなたに宛てたも残されています。『どれほど愚かな真似をしても、切な息子だから警察には言わない』と。……お母さんは、あなたを犯罪者にしたくなかったんだ」 正の目から、ボロボロと粒の涙がこぼれ落ちた。だがそれは、悔の涙ではなく、完全に逃げを失った者の絶望の涙だった。 「けれど同に、こうもかれていました。『もし反省しないのなら、健太郎君にすべてを任せる』とね」 「う、うるさい……! おなんかに、何が分かるんだ! 企業のしがない経理係の分際で、偉そうに説教するな!」 窮に追い込まれた正が、最のプライドを振りかざして吠えた。 俺は静かに笑い、胸ポケットからもうつの証を取りしてテーブルの央に置いた。 「分かりますよ。なぜなら……私はまで、企業の巨額正を暴く第線で働いていた、公認会計士だからです」 正と直子のきが、完全に止した。 「こ、公認……会計士……?」 「あなたのやったは、業務横領や背任の事件で最も初歩で典型な、教科通りの犯罪パターンです。数字を見れば、素のあなたが何を考え、どう隠蔽しようとしたのか、すべて筒抜けなんですよ」

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正は息を呑み、子にく沈み込んだ。その顔には、完全な絶望のが張り付いていた。 「今なら、まだにいます」 「……な、何が……」 「お母さんの仏にをつき、から謝罪すること。そして、盗んだ百万円を、利息を含めて全額返済することです」 「そ、そんな……もう残ってないよ……!」 「分割でも構いません。きちんとした債務弁済契約を作成します。ただし……度と、由やお母さんの名を汚すような真似は許しません。もしこの条件を拒否するなら、私はこので警察署へ向かい、すべての証拠と録音データを提して告訴状を提します。商社のコンプライアンス部にも、同じ資料を送付することになるでしょうね」 正はを抱え、テーブルのに突っ伏した。 「……わかった……俺が悪かった……母さんに、本当に申し訳ないことをした……」 掠れた敗の言葉が、男のから絞りされた。 俺はレコーダーの止ボタンを押し、由を促して席をった。 第ラウンドは、俺たちの完全な勝利だった。

ファミリーレストランでの直接対決から、俺と由は都の古びた雑居ビルにある『田法律事務所』を訪れていた。 の義母が、れず顧問を依頼していた弁護士、田孝志氏と面談するためだった。 「お待ちしておりました、田様、由様」 髪交じりの温そうな田弁護士は、俺たちを応接に迎え入れると、鍵のかかった架から通の厳に封印された面を取りした。

「実は、美代子様から、正式な公正証遺言をお預かりしております」 俺と由は顔を見わせた。庫の証拠だけでなく、弁護士のにも遺言が託されていたのだ。 「この遺言は、特殊な条件が付されておりました。『男・正氏による正為が発覚し、田健太郎氏によってそれが証されたにのみ封すること』と。昨、健太郎様からのお話を受け、条件が完全に成就したと判断いたしました」 田弁護士がペーパーナイフで封を切る。 から現れた公文の文面は、義母の最の、そして毅然たる審判だった。 『遺言者は、その所する切の財産を、女の夫である田健太郎、および女である由に包括して相続させる。男・佐藤正には、何らの財産も相続させない。その理由は、における度なる背任および銭詐取為によるものである』 義母は、もから公正証遺言を作成し、法な防壁を完璧に築きげていたのだ。

さらに、田弁護士のから、驚くべき事実がかされた。 「美代子様が用周到だったのは、これだけではありません。これをご覧ください」 机のに差しされたのは、正の自による枚の『借用』だった。 『借用。

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