"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第16話
作業員が差ししてきたリングには、真しい本の鍵がっていた。
「ありがとうございます」
私はその鍵を受け取り、ポケットに収めた。
玄関からリビング、キッチン、そして階の元・私の部まで、管理会社の担当者とともに歩いた。
健たちが勝にけた壁の穴、タバコのヤニで黄ばんだクロス、引きずりされた具の傷。
担当者がタブレットに修繕箇所を次々と記録していく。
「原状回復費用ですが、概算で万円ほどになりますね。経劣化を超える過失部分が数見受けられます」
「敷と相殺の、分については居者である健宛に内容証郵便で請求を送付してください。送付先の所はこちらです」
私はメモ用に、健が逃げ込んだ郊のアパートの所を迷わずき殴った。
けなど、滴も残すつもりはない。
担当者が会釈をして退し、私は、空っぽになった自宅の玄関にった。
静かだった。
が痛くなるほどの静寂。
肋骨の奥がしだけ疼いたが、く息を吸い込むと、肺の隅々まで澄んだ空気がき渡る覚があった。
私は玄関のドアノブを握り、へた。
鍵穴に真しいディンプルキーを差し込み、へ回す。
カチリ。
な属音が、過の沼に、永の終止符を打った。
週の曜。
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私が滞しているバリアフリーマンションのインターホンが鳴った。
モニターを確認すると、そこにっていたのは美だった。
ドアをけると、美はく、直角にをげた。
には、さな菓子折りと、冊のいファイルが握られていた。
「お姉さん、休に突然申し訳ありません」
「どうぞ、入って」
内のローテーブルに向かいって座ると、美は元のファイルを差ししてきた。
「健さんとの婚調、成しました」
類には、庭裁判所の印が押されていた。
養育費の算定表に基づき、健の与から毎確実に引きされる続きを、弁護士を通じて完させたという。
「健さんは、今……」
美は自嘲気に息を漏らし、現の弟の様子を語り始めた。
健は昼の運送会社の仕事をクビになり、今は夜の凍倉庫で雇いの仕分け作業を掛け持ちしているらしい。
築、エアコンも壊れた呂なしアパートで、カップ麺をすすりながら消費者融の返済と養育費の支払いに追われる々。
見栄を張るためのフォトウェディングどころか、しいの着すら買えない極貧活に転落していた。
「自業自得です」
美はたく言い放った。
「あの、お姉さんが私に真実の類を見せてくださらなかったら、私も子どもたちも、健さんとお義母さんの嘘に巻き込まれて共倒れになるところでした。
本当に……ありがとうございました」
美は涙を浮かべながら、再びくをげた。
「これ、健のに残っていた、お姉さんの実のアルバムです。勝に持ちしていたみたいで……お返しします」
「ありがとう。助かったわ」
美はしだけ肩の荷がりたような顔をして、自分のでを向いて歩くシングルマザーの顔で、部をていった。
母が入居したサからは、毎末に『活状況報告』がメールで届くようになった。
さんからの添えきには、母の況が淡々と記されていた。
入居当初、母は周囲の入居者やスタッフに対して「私は娘に無理やり追いされた」「息子が助けに来てくれる」と触れ回っていたらしい。
だが、スタッフたちは認症や族トラブルの対応に慣れた百戦錬磨のプロだった。
「そうなんですね、変でしたね」と事務に受け流され、誰として母の被害妄を真に受ける者はいなかった。
健が面会に来たことは、度もなかった。
やがて母は、自分がどんなに声をげても、泣き落としを使っても、ここでは誰も特別扱いしてくれないという厳な事実に直面した。
洗濯も、事の片付けも、決められたルールに従わなければ誰もを貸してくれない。
、娘がどれほどの労働とのに、母の「適な常」
を築きげていたのか。
それをいらされた母は、次第に数を減らし、最では施設の談話の隅で、ぼんやりとテレビを眺めて過ごしているという。