みかん小説
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"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第8話

私はベッドので、郵送されてきた入居申込にペンをらせた。

契約者氏名、真由美。 緊急連絡先、理恵。

親族の名は、欄のどこにもかなかった。

印鑑を押し、類を封筒に収めた瞬、胸の奥を塞いでいたたい圧が、ふっと軽くなった。

私は逃げるのではない。 全な陣を確保し、反撃のための拠点を築いたのだ。

そのの夕方、病の引き戸が乱暴にけ放たれた。

入ってきたのは、顔を真っ赤にして肩で息をしている健だった。

作業着のにダウンジャケットを羽織り、のついた靴音を響かせてベッドに詰め寄ってくる。

「姉貴! てめえ、美に何余計なもん送りつけてんだよ!」

健の鳴り声に、病の空気がビリリと震えた。

「……ノックくらいしたらどうなの」

「うるせえ! なんで昔の遺産の類なんか美に見せるんだよ! おかげで昨の夜から美がもきいてくれねえじゃねえか!」

健はポケットから丸めたを引っ張りし、私のベッドのに叩きつけた。

昨夜、私が美に送信した遺産分割協議のプリントアウトだった。

「何が『権利はゼロ』だ! おやじは昔から姉貴ばっかりがってた! 仕事ができるだの、しっかりしてるだのって褒めちぎってよ! 俺がどんないで肩の狭いいをしてきたか、姉貴には分からねえだろ!」

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「それが、私のを乗っ取っていい理由になるの?」

「遺産を公平に分けたのが悪いんだろうが! おやじの財産を元にして買ったなら、俺にだって権利があって当然だ! 追いす気なら、当の遺産分けを最初からやり直せ!」

喚き散らす弟の顔を、私はややかに見つめた。

けなくて、れで、何の慨も湧かなかった。

「やり直す? 法に効な遺産分割協議を、も経ってから単独で覆せるとっているの?」

「弁護士ててやるよ! 親戚だって、みんな母さんと俺の方だ!」

「てればいいじゃない」

私のあまりに静かな返答に、健は言葉を詰まらせた。

「法テラスでも民の事務所でも、好きなところへきなさい。着で万、相談料で万円かかるけれど、今のあなたにそんなおがあるの?」

「なっ……」

「宅ローンの名義変更をが認めるわけがないでしょう。収、勤続数、信用報。今のあなたに、千万円以のローン審査が通る見込みがあるとでもっているの?」

経理担当者としての現実な数字を淡々と突きつけると、健の顔から急速に血の気が引いていった。

この男は、何も考えていなかったのだ。

母が「あんたのよ」と囁き、姉が独だからという甘えに寄りかかり、登記や契約という現実のシステムを何つ理解していなかった。

「……姉貴、たすぎるだろ。族なのに」

健の声が、急激に力を失い、震え始めた。

都が悪くなると、いつもこうして被害者の顔をする。

「帰って。度と私の病にを踏み入れないで」

健は悔しそうに唇を噛み締め、捨て台のように言い残して病をびしていった。

静寂が戻った部で、私はベッドのに放置された遺産分割協議のを丁寧に折り畳み、サイドテーブルの引きしに仕った。

だが、そのの波乱は、まだ終わっていなかった。

午を過ぎた頃。

面会をとっくに過ぎた暗い廊から、控えめなノックの音が聞こえた。

「……どなたですか」

ドアが静かにき、入ってきたのは、弟の妻の美だった。

化粧が崩れ、目のには濃い隈が浮かんでいる。

昨のLINEで見せた図々しい能気さは完全に消え失せ、怯えたような表で病の隅にっていた。

「お姉さん……夜分遅くに、すみません」

「美さん。面会は終わっているはずですが」

「護師さんに、どうしても類の件で言だけ謝りたくてって無理を言って……分だけでいいんです」

美はパイプ子にも座らず、ベッドの脇で々とをげた。

「本当に、申し訳ありませんでした。私、何もらなくて……」

「健から何を聞いていたの?」

私の問いに、美はバッグをく抱きしめ、消え入りそうな声で告し始めた。

「健さんは……あの軒は、お義父さんの遺産で建てた族全員の共財産だって。お姉さんは独だから、将来は男である健さんが管理することになってるって……お義母さんも、全く同じことを言っていたんです」

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