みかん小説
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"6年間の節約生活、夫にとっては「庶民ごっこ」だった" 第13話

空は群青に染まり、みなとみらいの観覧が、ややかに輝き始めている。

傷は消えない。 あの夜の屈辱も、裏切りも、なかったことにはならない。 それでも、私のは、確かに面を踏みしめていた。

角の古い造アパートに、さなワンルームを借りた。

賃は万千円。 駅からはし歩くけれど、当たりだけは良かった。 敷と礼、当面の活費は、の折半座から清算した私の取り分からした。 夫からのは、円もをつけていない。

毎朝に起き、会社へ向かった。 定で退社したあとは、関内のビジネススクールへ直した。 受講したのは、国際サプライチェーン管理の専講座。 受講料の万円を自分の普通預から括で振り込んだ、通帳の残はごっそり減ったけれど、指先には確かな応えが残っていた。

自分ので、自分の志で、自分の未来を買う。 あの、節約という名ので置きりにしてきた自分自のを、夜遅くの講義で、文字ずつノートにき留めて取り戻していった。

夫とは、に度だけ連絡を取りった。 報告は、事務な件に限られていた。

『本のプロジェクト、現統括として業務委託契約を締結した。役員報酬ではなく、技術顧問としての固定報酬でしている。

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役員会の議事録の写しを送る』

送られてきたPDFファイルをくと、そこには久世会のサインとともに、夫の求がすべて通った契約条件が記されていた。 創業としての特権を放棄し、の専技術者として現に入る。 居の制移転はわず、親族事への族の席義務も免除する。

あのは、本当に約束を守っていた。 言葉でごまかすのではなく、契約というかせぬ現実を作って見せていた。

が過ぎ、桜が散り、初の差しが横浜のを包み始めた頃。 社内で、異例の辞令がた。

「森川さん、来から設されるグローバル調達推のリーダーをお願いしたい」

役員で部から辞令を渡された、胸の奥がくなった。 取得した資格と、のな調達実績が、正当に評価された結果だった。 収は百万がり、自分のチームを持つことになった。

誰のコネでもない。 誰の「配」でもない。 臭く、自分のでいがって掴み取った席だった。

辞令を受け取ったそのの夕方、スマートフォンに件のメッセージが届いた。 通画面に表示された名に、指が止まる。

神玲奈からだった。

あのホテルのラウンジでたく突き放して以来、半ぶりの連絡だった。 文面は、以のような焦りや媚びの気配がすっかり消え失せていた。

『彩乃、突然の連絡をごめんなさい。 今、本の再発プロジェクトの広報コンペの結果がました。 うちのチームは、負けました。通の案が通ったそうです』

メッセージをスクロールする。

『負けて、悔しくて、会社のトイレで泣きました。 でも、議とすっきりもしています。 うちのチームがした提案は、全員で徹夜して、誰もコネに頼らずに作った最の企画だったから。

あの同窓会の夜のこと、ずっと考えていました。 ご主のをらなかったから失礼なことを言った、なんて言い訳をして、本当にごめんなさい。 誰がどこの誰かなんて関係なく、額に汗して働くの尊厳を笑った私が、ただ浅ましくて醜かっただけです。 広告のプロ失格だったのは、私のほうでした。

彩乃が突っぱねてくれたおかげで、目を覚ますことができました。 返信はいりません。 ただ、から謝りたかったの。本当に、ごめんなさい』

画面を見つめたまま、私はオフィスの非常階段の踊りで、さく息を吐きした。

玲奈を許す、というのとはし違う。 同窓会で受けた侮辱のトゲが、完全に消えったわけでもない。 けれど、の社会が自分のプライドの砕を受け止め、逃げずにをげてきたことに対して、軽蔑のはもう湧かなかった。

私は返信画面をき、く打ち込んだ。

『メッセージ、受け取りました。コンペ、お疲れ様でした。お互い、自分の仕事で胸を張れるように頑張りましょう』

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