"13年前に消えた母の手帳に、夫の昔の名前があった" 第10話
ぶりに、このには「捜索」の文字がなかった。 壁に貼られていたあせたビラも、話の横に置かれていた警察署の連絡先メモも、すべて処分されていた。
座卓のに置かれた私のスマートフォンが、く震えた。
画面を見ると、見らぬ番号からのショートメッセージが表示されていた。 ブロックをすり抜けて届いた、たったの文面。
『今、俺は警察にかなかった。もう度と、君の代わりに探したりしない。』
あのからの、最の言葉だった。
私はその画面を数秒だけ見つめ、何も返信することなく、指先でメッセージを完全に消した。 そして、通信そのものを度と受信できないよう設定し、画面を伏せてテーブルのに置いた。
鍋から湯気がちり、父が蕎麦の入った丼をつ、お盆に載せて居へ運んできた。
「美奈、できたぞ」
「ありがとう、お父さん」
テーブルを挟んで向かいい、割り箸を割る。 かつお節と醤油の優しいりが、えた体をじんわりと温めていく。
くの寺から、除夜の鐘のく澄んだ音が、ひとつ、またひとつと響いてきた。
父が蕎麦をすすり、ふと箸を止めて私を見た。
「……美奈。今はお母さんを、探しにかないんだな」
、毎晦になるとをびしていた娘への、静かな問いかけ。
私は顔をげ、父に向かって穏やかに微笑んだ。
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「うん。もう、帰る所が分かったから。」
父は目を細め、く、く頷いた。
窓のを見つめると、甲府の夜空には吸い込まれそうなほど澄んだが広がっていた。
ふと、の記憶が蘇る。
婚のの、最初の晦。 母が見つからず、寒空ので泣きじゃくる私の肩を抱き寄せ、あのは元で囁いたのだ。
『もう、ひとりで探さなくていいよ』
あの、私はその言葉を世界で番優しいの誓いだとい、涙を流して謝した。
でも、違った。
あの言葉の本当のを、の私はっている。
あれは救いなんかじゃなかった。 「おが真実に辿り着かないよう、これからは俺が見張ってやる」という、酷な宣告だったのだ。
夜ののへ、除夜の鐘の音が静かに消えていく。
私ののの湯呑みからちる湯気が、目のの界をく染めていた。