みかん小説
本棚

"引っ越しを手伝った父に5000円、夫が隠した同居計画" 第23話

父もリビングのソファに腰をろしながら、く頷いた。

「ああ。お1でむには分すぎるくらいだな」

私たちはダイニングテーブルに買ってきたお惣菜を並べ、し遅めの昼をとった。

のない世話で笑いい、穏やかなが流れていく。

のコーヒーをんでいる、母がふといしたようにをいた。

「そういえば、この町内会で佐藤さんの奥さんにばったり会ったのよ」

その名がても、私のはもう全く波たなかった。

私は、尋ねた。

「へえ。お義母さんに?」

母は、しだけ複雑な表を浮かべた。

「ええ、向こうから声をかけてきてね。わざわざち止まって、『美紀さんには本当に申し訳ないことをした』って、また謝ってくれたわ」

母はそう言って、コーヒーにをつけた。

「お父さんもお母さんも、あのご両親にはもうってないわ。ただ、もうしく健太さんの問題に気づいてあげられていたらって、それだけは言ってたけどね」

私は、静かに頷いた。

「そうね。でももう終わったことだから」

父がコーヒーカップを置いて、私を見た。

「健太君とは、あれから連絡はあるのか?」

私は、首を振った。

「ううん、全く。事務な続きが全部終わったに1度だけが来たきりよ」

父は、それ以は何も聞かなかった。

「そうか」

健太が今、あの古いアパートでどんな活をしているのか。

広告

会社での孤や失ったへの未練にどう折りいをつけているのか。

私にはる由もありませんし、る必もなかった。

ただ1つ確かなのは、彼が『の同を先取りする』という傲さを捨てない限り、本当のでしくやり直すことはできないだろうということだ。

父が、真面目な声で私を呼んだ。

「美紀」

私は、顔をげた。

「何?」

父の問いかけは、決して再婚を急かしたり、将来を配したりするようなものではなかった。

「おは、この先どうするつもりだ?」

ただ私自が、自分のでどう歩いていくのかを、1のとして確認しているような響きがあった。

私はしだけ考え、部の窓辺で揺れる観葉植物に線を向けた。

私は、微笑みながら答えた。

「どうするって?特別なことは何も考えてないよ。今の仕事は好きだから続けるし、休みのはこうやってゆっくり過ごすわ」

私は、言葉を続けた。

「たまには友達と旅にったり、美しいものをべにったりするかな」

父は、頷いた。

「そうか」

私は両親の顔を交互に見つめた。

「今はただ、自分の元をしっかりと踏みしめてきていきたいの。誰かに寄りかからず、誰かに寄りかかられすぎず、自分の責任でを選ぶ。それが1番の贅沢だなってうから」

私の言葉を聞いて、父はしだけ目を細め、何度も頷いた。

「ああ、それがいい。おが自分で決めたことなら、俺たちは何も言わない」

母も、隣で優しく微笑んでくれた。

「美紀が元気で毎笑って過ごしてくれているなら、お父さんもお母さんもそれだけで分よ」

夕方になり、両親が帰るになった。

私は、2を駅まで見送ることにした。

マンションをるとたいが頬を撫でたが、の訪れを告げるそのたさが、なんだかよくじられた。

改札で、私がを振った。

「気をつけて帰ってね」

両親も笑顔で振り返り、改札のへと消えていった。

私は両親の背が見えなくなるまで見送り、それからゆっくりと自分のマンションへ向かって歩きした。

通りには、夕の買いしに向かうや、にを急ぐたちの姿があった。

そのを1で歩いていると、ふとあのの父の言葉がをよぎった。

『佐藤君、悔するなよ』

あの言に議な力があって、夫の運命を変えたわけではない。

父は夫の会社へ話もしなかったし、を止める権力も使わなかったのだ。

夫の運命を変えたのは、それまで彼が何度も先にき込んできた、まだ誰も言っていない『はい』だったのだろう。

親だからむだろう。

妻だから署名するだろう。

族だからをすだろう。

自分が正しいとえば最には皆が従うだろう。

その1つ1つの『だろう』が積みなり、最に誰も『はい』と言わなくなった、彼の計画も結婚も初めて本当の姿を現したのだとう。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: