"引っ越しを手伝った父に5000円、夫が隠した同居計画" 第13話
私は、夫の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「あの5000円は、あなたのの奥にあった無神経さがたまたま形になって現れただけのものよ」
私は、続けた。
「俺の親は迎えるで、おの親は働くだって。おが言った通り、順番が違ったんだ」
私は、首を振った。
「それだけじゃないわ。みんなの返事がまだなのに、あなたのでは全部決まっていたのよ」
夫は何かを言いたそうにをいたが、結局何も言葉にならなかった。
私は、静かに告げた。
「をやして、自分が本当に壊したものが何だったのか1で考えてみて」
私はそれだけを告げて、静かに玄関の扉を閉めた。
い扉が閉まる音が、私たちのに引かれた決定な境界線のように響いた。
のには、私1だけの音が響くようになった。
広すぎるリビングに1でっていても、寂しさやは全くじなかった。
むしろ、誰かの勝な予定に自分のが組み込まれる配がなくなったことで、がく呼吸しているような覚があった。
これから先の未来の予定には、私の『はい』という同だけがき込まれていくのだ。
私は窓をけ、しいに入ってくるたいを胸いっぱいに吸い込んだ。
夫の健太がをてから2週が経った。
しく買った1戸建ては、私1で暮らすには広すぎた。
しかし、夜に1でリビングに座っていても、議と孤独や寂しさをじることはなかった。
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むしろ、夫の音やため息に神経を尖らせる必がなくなり、は穏やかに凪いでいた。
そんなある、夫からいメッセージが届いた。
『の午、予約していたカウンセリングの件、よろしくお願いします』
私たちは別居を決めた、1度専を交えて話しうことを約束していた。
それは関係を修復するためというよりは、お互いの認識のずれを第3者ので理するためだった。
私は『解しました』とだけ返信し、携帯話をテーブルに置いた。
翌の曜。
私は、に乗って隣町の駅にある夫婦問題の相談へ向かった。
ビルの3階にあるさな待に入ると、すでに夫が子に座って待っていた。
別居してから初めて見る夫の姿は、以よりもしだけ痩せたように見えた。
「美紀、久しぶり」
夫はちがり、しぎこちない笑顔で挨拶をしてきた。
「寒くなかったか?」
私は、く答えた。
「丈夫よ。ありがとう」
夫のそんな気遣いは、緒に暮らしていた8にはほとんど見られなかったものだった。
失ってから慌てて態度を変える姿に、私はどこかめたを抱いていた。
やがて名を呼ばれ、私たちは静かな個へと案内された。
髪交じりの落ち着いた女性カウンセラーが向かいの席に座った。
彼女は、ゆっくりとをいた。
「お2が別居に至った経緯について、まずはご主の方からお話しいただけますか?」
夫はし緊張した面持ちで頷き、語り始めた。
「きっかけは、先の引っ越しののことでした」
夫は、私の両親が伝ってくれたこと、自分が5000円を渡したことを説した。
「俺は、5000円の渡し方が本当に悪かったとっています。妻のご両親を業者みたいに扱ってしまった」
夫は反省のをめ、伏し目がちに言葉を続けた。
「妻がるのは当然です。そのから関係がおかしくなって、親父たちにも見放されてしまいました」
カウンセラーは静かに頷きながらメモを取った。
それから、私の方へ線を向けた。
「奥様は、今の経緯を聞いてどのようにじられましたか?」
私は元のハンカチを軽く握り直し、静かに答えた。
「渡し方が悪かったというのは事実です。でも、もしそれだけならここまでにはなっていません」
夫が弾かれたように顔をげ、私を見つめた。
私は、続けた。
「それだけなら、あの喧嘩をして彼が私の両親に謝罪して終わっていたはずです」
カウンセラーは、尋ねた。
「では、何が決定な原因だったのでしょうか?」
私は、はっきりと答えた。
「順番です」
カウンセラーは、聞き返した。
「順番、ですか?」
私は、頷いた。
「はい。5000円も、同居話も、事業計画の資も、全て同じ問題なんです」
私は、夫の方を見ずに、真っ直ぐにカウンセラーを見て説を続けた。