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"新調した下着と消えた八百万円" 第9話

婚の続きは、弁護士の完璧な采配によって、極めて迅速かつ徹底に完した。 貴之は慰謝料百万円と、使途百万円の全額返還に応じることとなった。持ちとは処分され、彼は額の借を背負うことになった。 さらに、親族のでの醜態と、取引先関係者を巻き込んだ貞スキャンダルは瞬くに社内にれ渡り、彼はだった型プロジェクトからされ、方の閑職へと遷されたという。だった倉田奈緒も、額の慰謝料請求に恐れをなし、貴之のから音もなく姿を消した。

方、節子は親族から「息子の始末を放置し、嫁をいびりした元凶」としてされ、以のような傲な振るいは完全に鳴りを潜めたとの噂で聞いた。

けれど、そんな元夫やその族の末など、今の澪にとってはどうでもいいことだった。

澪は会社での実績が評価され、今のから設されたデザイン戦略のチーフに抜擢されていた。自分の裁量で空をデザインし、クライアントと真摯に向きう毎は、かつてないほどの充実に満ちていた。

休の午。 澪はクローゼットをけた。

そこには、誰のためでもない、自分自がから美しいとえるが並んでいた。 引きしをけると、あの夜、惨めさにまみれて捨てようとしたネイビーのレースのランジェリーが、綺麗に畳まれて収められていた。

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あの、あのスーパーの駐で、涙に暮れていた自分。 「自分が恥ずかしくて泣ける」と、ステアリングに額を押し当てて震えていた自分。

澪はそのランジェリーを指先でそっと撫でた。

(……もう、何も恥じることなんてない)

傷つき、ボロボロになりながらも、彼女は自分の尊厳を自らので取り戻したのだ。誰かにされることでしか自分の価値を測れなかった過の自分とは、完全に決別した。

あの夜――がフロントガラスを激しく叩きつけるスーパーの暗い駐で、ステアリングに額を押し当てて声を殺して泣いていた自分の姿が、今ではまるでい世の記憶のようにえる。特売の牛乳パックと値引きシールの貼られたカットフルーツを助席の元に転がし、「疲れたから今くのやめよっか?」という、あのあまりにも軽で無邪気な言に打ちのめされていた夜。夫に求められない自分には、妻としての、女としての、いや、のとしての価値など何ひとつないのだと本気でい詰め、え切った内で震えていた。あの頃の自分を、今の澪は痛いほどのおしさと切なさをもって、そっと胸の奥で抱きしめることができる。

向きのきなスリット窓から、の柔らかな差しが惜しみなく差し込んでいた。オーク無垢材のフローリングのに、しく買い揃えた丸みのあるローテーブルと、さなウンベラータの鉢植えがよいを落としている。

かつて貴之と暮らしていたあのマンションは、広くて設備こそ最だったが、どこかモデルルームのように淡で、常に夫の嫌や義母のの線に怯えながら過ごす息苦しい所だった。靴の脱ぎ方つ、タオルの畳み方つにまで義母の言が入り、夫の好みを優先して自分の好きなインテリアを置くことすら慮していた。事を完璧にこなし、夫をて、波をてないことだけが、自分の居所を確保するための唯の段だとい込んでいたのだ。

だが、このしい部には、澪が選び抜いたものしかしない。触りの良いリネンのカーテン、休に丁寧に淹れるアールグレイの芳醇なり、自分がから「美しい」「落ち着く」とえる質と彩。インテリアコーディネーターとしてのまいを彩り続けてきた彼女が、ようやく自分自のために設えた、何ものにも脅かされない静かな聖域だった。

婚の続きと慰謝料の回収を終えた、澪のにはぽっかりと穴がくかといきや、待っていたのは驚くほどの軽さと、澄み切った解放だった。貴之が裏で引きしていた共財産は弁護士のによってきっちりと清算させ、貞を働いたには然るべき責任を負わせた。

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