みかん小説
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"初婚のはずの夫、新婚のベッドの奥に4年前の結婚写真" 第15話

「本当に、やり直せないのか。俺、本当に反省したんだ。実から通い直して、もう度……」

私は何も答えず、目のに置かれた緑の枠線の用――《婚届》の妻の欄に、黒い万で迷いなく自分の旧姓を署名した。

カチリと音をててペンを置く。 それが、私のすべての答えだった。

健太は諦めたように肩を落とし、震えるで自分の欄に署名した。 婚姻活、わずかか。 私の代の最に刻まれた、くも痛い騙し絵のような季節が、法に完全に幕を閉じた瞬だった。

そので渋区役所へ向かい、戸籍係の窓に婚届を提した。 しい戸籍謄本が交付されるまでの、ロビーのベンチで目を閉じる。 誰かの嘘に付きう必のない、誰の顔を窺うこともない、絶対な自由が全に満ちていくのをじていた。

初の陽射しがアスファルトをく染める週末、私は野区にある築浅のマンションへ引っ越した。

駅からは徒歩分。 向きの角部で、ベランダからはくの並が見ろせる。 取りはLDK、専面積平米。 世田の部に比べればずっとぢんまりとしているが、敷も礼も賃も、すべて私が自分で稼いだ与座から支払った、紛れもない「私の」だった。

百万円の預は、円たりとも減ることなく私の座に残されていた。

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午、注文していた具が届いた。 配送業者の男性が、段ボールから部材を取りし、リビングの奥の寝で組みてを始める。

インテリアショップでベッドを選んだとき、員はに勧めてきた。 『こちら、がすべて容量の引きし収納になっているタイプです! 季節物の寝具やスーツケースなど、見せたくないものを全部隠せますよ』

その、私は微笑んで首を横に振った。 『いいえ。が完全に抜けていて、窓からのが通り抜けるものにしてください。掃除が隅々まで届く、シンプルな本脚のフレームをお願いします』

組みがったのは、るいオーク材で作られた、極限まで無駄を削ぎ落としたベッドだった。 には何の仕切りもなく、本の丸脚がしっかりとフローリングを捉えている。 どこから見ても、何つ隠すことのできない、完全な透性。

「奥さん、設置終わりました。確認お願いします」 「ありがとうございます。完璧です」

作業員を見送り、鍵をしっかりと閉めた。

窓をきくけ放つと、初の爽やかながレースのカーテンをふわりと揺らした。 がいっぱいに差し込み、真しいシーツをに染めげていく。

私はベッドの端に腰をろし、く息を吸い込んだ。 樟脳の匂いも、粘着テープの腐った末も、誰かの過の残骸も、ここには何ひとつない。

ただ、干したばかりのコットンの清潔な匂いだけが満ちている。

ふと、あのベッドので見つけた写真をいした。 真鍮の鍵を掲げて「やっと私のができた」と笑っていた、澤真由さんの顔。 彼女もきっと、あの瞬はからできる居所を信じていたのだ。 そして私もまた、男が用した体裁のいい台装置を、自分の未来だと信じ込んでいた。

けれど、本当のは、誰かが買い与えてくれた部の権利のにあったのではない。 違に気づいたとき、嘘を見抜いたとき、それを自分ので蹴倒してちることができる――自分自の決断力のにしかなかったのだ。

ベッドのを、もう度と怯えながら覗き込む必はない。

私はちがり、蔵庫からえた麦茶を取りした。 の仕事のスケジュールを帳にき込み、夕の買いしのメモを作る。

私の活は、誰の指図も受けない。 私のでち、私ので選び、私のでんでいく。 の射するい部ので、私は初めて、の底からく、らかな呼吸を吐きした。

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