みかん小説
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"恩人の葬儀の裏で、夫は私の実家に値段をつけていた" 第14話

氏名は『佐伯真理子』から、旧姓の『藤本真理子』へと戻っていた。

歳。 両親をくした歳のあのから、が経っていた。

翌の。 私は週の休暇を取り、崎の実を訪れていた。

青く澄み渡ったれの、古いは見違えるようにえられていた。 漏りしていた根瓦は元の昔ながらの職さんに葺き替えてもらい、傷んでいた戸や障子も張り替えた。

売却は、しなかった。 かといって、になってつかずのまま放置するつもりもない。 必な入れをし、空気を通し、いつか自分がどうしたいかを、自分自のペースで決めるために、私はこの所を守ることにしたのだ。

勝のサンダルを履き、裏庭の枯れ葉を掃いていると、の向こうから佳代さんがを振って歩いてきた。

「真理子ちゃん! 根、綺麗になったわねえ」

「佳代さん、こんにちは。職さんがすごく丁寧にやってくださって」

「よかったわねえ。幸恵さんもんでるわよ。あ、これ、うちの畑で採れたサツマイモ。蒸かしてべなさいな」

聞に包まれた温かい付きの芋を受け取りながら、私はからの笑顔を浮かべた。 世体など気にしなくても、ここには当たりの、確かなの温もりがあった。

佳代さんを見送った、私は久しぶりに、兄が昔使っていた帳机のの子に腰をろした。

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向きの窓から、柔らかなの差しが畳のに広がっている。 テーブルのには、擦り切れた義姉の計簿と、あの、布バッグの底から取りした真鍮の鍵。

鍵を指先で持ちげると、差しを受けて、鈍いに優しくった。

『真理子は、うちで暮らせばいい』 『ここは、あなたのでもあるんだから』 『これで、おのはおのものだ』

兄と義姉の声が、静かな部の空気に溶け込むように蘇ってくる。

が私に遺してくれたのは、という産でも、通帳に残された数字でもなかった。

どんな理尽に晒されても、誰かに見されても、自分ので考え、自分のでち、自分のを誇りくきるための――決して奪われない、の自由だったのだ。

私は仏壇のに歩み寄り、線を本向けて、をわせた。 写真ので並んで笑っている、器用で、誰よりも温かかった兄夫婦の顔を見つめる。

喉の奥から、静かで、迷いのない言葉が零れ落ちた。

「お兄ちゃん、幸恵さん。私、ちゃんと自分のをきてるよ」

線のい煙が、ののをまっすぐにちっていった。 閉ざされていた胸の奥の扉が、音をててきくいたような気がした。

私は真鍮の鍵をしっかりとポケットに収め、しいを胸いっぱいに吸い込みながら、窓を力いっぱい押しけた。

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