"赤字物件と笑う夫、毎月9万の裏口座" 第10話
「あの契約が」——。 に乗り込む直、直がったその言葉が、の奥に引っかかっていた。
あの男たちは、単に古いビルをく買い叩こうとしているだけじゃない。 もっと別の、私がサインしなければ破綻するような、巨な「何か」を裏でかしている。
素の私では、これ以は追いきれない。 産の仕組みも、法律の盾も、今の私には圧倒にりていなかった。
私はスマートフォンを取りし、アドレス帳の奥底に眠っていた、ひとつの番号を探しした。
5、父の葬儀の受付に、々とをげて典袋を差ししてくれた初老の男性。 『お父には、商の青会代から本当にお世話になりました。何か困ったことがあれば、いつでも相談してください』 そう言って名刺を渡してくれた、父の昔馴染み。
『田島産管理・代表取締役 田島信也』
私は迷わず、発信ボタンを押した。
川駅から徒歩5分。 雑居ビルの2階にある田島産管理の事務所は、派な板こそないものの、類が几帳面に理された清潔な空だった。
「——なるほど。そういうことでしたか」
応接スペースの革張りソファに座る田島信也さんは、髪混じりの髪を撫でげながら、私が持参した資料から顔をげた。 55歳。穏やかな目元をしているが、類を見る線は剃刀のように鋭い。
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机のには、佐野さんの賃貸契約、通帳のコピー、直が提してきたデタラメな収支報告、そしてあの『売却承諾』が並べられていた。
「恵理さん、よくでここまで証拠を集めましたね。そして何より……昨夜、あの類に判を押さなかった。それは本当にファインプレーでしたよ」
田島さんは元の売却承諾を指先で弾いた。
「もしこれにサインして実印を渡していたら、取り返しのつかないことになっていました」
「……この『資会社K-Plan』という会社、ごじなんですか?」
私が尋ねると、田島さんはパソコンの画面をカタカタと操作し、枚のプリントアウトを差ししてきた。 商業登記簿謄本だった。
「さっき法務局のオンラインで引いてみました。この会社、設されたのはわずか半。資本はたったの30万円です。代表社員として登記されているのは『加藤亮介』という男ですね」
「加藤……?」
聞き覚えのある名に、喉がさくねた。
「当たりがありますか?」
「……夫の、元同僚です。直がよく『昔緒にデカい投資話に乗っかった仲だ』と自していました。数に会社を辞めて、独したと聞いていましたが……」
「ビンゴですね」
田島さんは険しい表で腕を組んだ。
「するに、ペーパーカンパニーにいトンネル会社です。旦さんとその元同僚が裏で糸を引いていると見て違いないでしょう。
そして、この売却価格を見てください」
田島さんが示した承諾の額。 と建物をわせて、わずか『1,200万円』。
「恵理さんのお父さんのビルがあるあの所は、駅の通りからは本入っていますが、商業域で建ぺい率も容積率もい。いくら築40超の古ビルとはいえ、の平米数だけで考えても、現の相なら最でも4,500万から5,000万円の価値があります」
「ご、5,000万……!?」
わず声が裏返った。 1,200万どころか、その4倍以の価値があるというのか。
「直は……『度と買いがつかないガラクタだから、解体費用を向こうが持つ代わりに1,200万で引き取ってもらえるだけありがたいとえ』と……」
「真っ赤な嘘です」
田島さんは即座に言い切った。
「解体費用なんて、鉄骨3階建てならせいぜい500万から600万程度ですよ。それを差し引いても、あまりにも買い叩きすぎている。……ですが、本当のは、その先にあります」
田島さんはちがり、壁に貼られた川駅周辺のきな都計画マップのにった。 赤いペンで、父の文具ビルの位置を丸で囲む。
「恵理さん、最あの商の裏で、古い民やさな倉庫が次々と取り壊されて、コインパーキングになっているのを見かけませんでしたか?」
「え……? ええ、そういえば、来る途に何箇所か更になっていました」
「あれはね、裏で流通グループが面でめている『敷の統・げ』ですよ」
田島さんの言葉に、息が止まりそうになった。