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"赤字物件と笑う夫、毎月9万の裏口座" 第4話

分かったな!?』

ツーツーという無質な切断音。

着信履歴を確認すると、着信の件数は「14件」に達していた。

喉の奥が、氷をみ込んだようにえ切っていく。

……嘘をついている。 あのは、決定な何かを隠している。

「付が流れる」? 「に委任状を提しないと」?

買いと媒介契約も結んでいない段階で、なぜ付の話がてくるのか。 それに、赤字で維持が困難な物件なら、なぜ夫がここまで血相を変えて焦る必があるのか。 売れなくて困るのは、名義である私のはずなのに。

私はベッドからちがり、部のライティングデスクに向かった。

バッグから、先ほど持ちしてきた類を取りす。 そして、財布の奥から、ずっと肌さず持ち歩いていた古いカードケースを取りした。

に入っていたのは、父がくなった直、司法士から渡された産の『登記事項証』の控えだった。 名義変更の続きが終わった際、「事なものだから元に持っておきなさい」と言われて保管していたものだ。

私はデスクのスタンドライトを点け、いのに枚のを並べた。

直が今夜突きつけてきた、売却承諾。 そして、5に発された、公な登記事項証。

さらに、スマートフォンを操作し、自宅のパソコンから自分のクラウドドライブにバックアップしていた、過の「収支報告」

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のPDFデータを呼びした。 直が「確定申告用だ」と言って、毎の瀬に私に見せていた類だ。

画面をスクロールしながら、私は目を凝らした。

2023度の収支報告。 【2階・舗B(28平米):空(修繕費持ちし 142,000円)】

2024度の収支報告。 【2階・舗201(35平米):退につき空(原状回復費用 210,000円)】

スクロールする指が、ピタリと止まった。

……え?

私は登記事項証の「建物の表示」の欄に線を落とした。 そこには、各フロアの面積が正確に記録されている。

1階:52.4平米 2階:48.6平米 3階:48.6平米

2階の総面積は、48.6平米しかない。 それなのに、直が提してきた報告には、あるは「28平米の舗B」、次のには「35平米の舗201」と記載されている。 取りをどう区切ったところで、そんな数字の組みわせにはなり得ない。

それだけではなかった。

直が持ってきた今夜の売却承諾には、こうかれていた。

【現況:全空・引渡し猶予なし】

全、空……?

父のビルには、1階の元文具のスペースのほかに、2階と3階にわせて3つの区画があったはずだ。 直はここ数、「誰も入らない」「ずっと空きだ」と言い続けていた。

だが、もし本当に5ずっと全が空だったのなら——。

なぜ直の収支報告には、毎数万円にのぼる「費基本料」と「定期清掃委託費」が計され続けているのか。 誰も使っていない所に、なぜ毎、定期清掃が必なのか。

元のスマートフォンが、く震えた。 15回目の着信ではなかった。

直からのショートメッセージだった。

画面に浮かびがった文字を見て、背筋にたい汗が流れた。

『の朝9に、川のので買いと待ちわせをしている。おが来ないなら、委任状のサインはおの跡を真似て俺がいておくからな。から文句を言うなよ』

……跡を真似る? 印私文の偽造をしてまで、、あの建物を放そうとしている。

どうしてそこまで焦るのか。 そこまでして、何を隠そうとしているのか。

「……勝なこと、させない」

声にした瞬、乾いていた喉の奥が、いりで満たされていくのが分かった。

私は震えるでスマートフォンを握り直し、の朝番の川きののを検索し始めた。

朝6。ビジネスホテルのいベッドので、私はアラームが鳴るに目を覚ました。

カーテンの隙から差し込むが、っぽい壁をく照らしている。 鏡に映った自分の顔は、目のに青黒い隈が張りつき、酷くやつれていた。

けれど、瞳の奥だけは冴え返っていた。 25、あので義母と夫の顔を伺いながら殺し続けてきた神経が、徹なまでの覚を取り戻している。

私は洗面台ので顔を洗い、スマートフォンをに取った。 パート先の印刷会社へ連絡を入れ、事を伏せて当の休暇を申請する。

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