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"赤字物件と笑う夫、毎月9万の裏口座" 第3話

最初の1、2は、直もマメだった。 「壁の塗装にいくらかかった」「の防事をした」と、施の写真を見せてくれたり、領収のコピーをまとめたファイルを渡してくれたりした。

けれど、3目を迎えたあたりから、夫のからる言葉は満ばかりになった。

「あそこももう潮だな。2階のテナントがてったきり、次の借りがつかない」 「配管から漏れが起きて、階の舗に迷惑をかけた。修繕費で数万んだよ」 「今期も持ちしだ。恵理、しパート代から補填できないか?」

夫が見せてくるパソコンで作られたA4枚の「収支報告」には、毎のように真っ赤な数字が並んでいた。

賃収入の項目はを追うごとに減り、逆に「保守修繕費」「雑費」という欄ばかりが自然に膨らんでいく。

『そんなに変なら、私、度見にってみようか? 所のにも挨拶したいし……』

度、そう切りしたことがあった。 すると直は、骨に嫌な顔をして私を鳴りつけた。

『おが素面してノコノコてってどうするんだ! 現は職が入りして危ないんだよ。それに、空き舗にみすぼらしい格好でかれたら、所の恥ずかしいだろ。俺に任せておけないのか?』

夫にそう言われると、私は自分の無を恥じるしかなかった。

義母からも、事あるごとに嫌を言われた。

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「直がわざわざ休みのに川までってやってるのよ。あんな稼ぎにもならないボロのせいで、息子の貴なが奪われてるわ。謝しなさい」

私はさくなって、「ごめんなさい」とをげ続けた。

いつのにか、川のは、私にとって「き父との温かいいの所」から、「夫と義母にががらなくなる原因」へとすり替えられていた。

本当に、そうだったのだろうか。

暗い夜を歩きながら、私はバッグのに押し込んだ類を、側からく握りしめた。

もし、あの建物が本当にただの厄介者で、直が言う通りの「赤字のゴミ」なのだとしたら。

なぜ今夜、あのはあんなにも必な顔で、私にサインを迫ったのか。

「先方はまでに返答が欲しい」

直のあの切迫した声が、の奥にこびりついてれなかった。

ビジネスホテルのに入ったのは、夜の10を回った頃だった。

荷物は、着替えも持たずにびしてきた提げバッグひとつ。 部のカードキーを差し込み、かりが灯った瞬、どっとい疲労が全を襲った。

ベッドの端に腰をろした途端、バッグのでスマートフォンがけたたましく震え始めた。

画面を見る。

【夫】

息を呑む。 画面を見つめたまま、私は通話ボタンを押さずに放置した。 1分く振し続けたあと、度は静まり返ったものの、数秒には再び激しい振が始まった。

2回、3回、4回……。

画面が消える暇すらない。 執拗なまでの着信の嵐。 25、あのが私に対してこんなに何度も話をかけてきたことなど、度たりともなかった。

夕飯の買いしを頼むLINEすら既読スルーし、帰りが午様になっても「仕事だった」の言で片付けていた男が、今、狂ったように私を呼びしている。

やがて着信が途切れ、留守番話の通アイコンが画面に並んだ。

私は震える指で、留守の再ボタンを押した。

ピッと子音が鳴り、スピーカーから直の苛ちを押し殺した声が流れてくる。

『おい恵理、どこにいる。母さんが配してるぞ。頼むから変なを張らないでくれ。あの売却の話は、おの将来のためをって段取りしたことなんだ。に委任状を提しないと、付が流れるんだよ。頼むから話にろ』

メッセージが切れ、すぐに次のメッセージが再される。 今度は、完全に気を隠せていなかった。

『……おい! 無するな! なんでないんだ! お、自分が何様のつもりだ? 25、誰の稼ぎで飯をわせてもらってたとってるんだ! あのはおの名義かもしれないが、維持してきたのは俺の労力だろ! おにそれを無にする権利なんかないんだよ! いいか、の朝番で役所にって、印鑑証を取ってこい。類に判を押して、午までに俺の会社に持ってこい。

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