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"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第15話

親族同、おたちを度と内とは認めん。勝に警察でも裁判所にでも引きずりされるがいい!」

叔父はそう言い放つと、ちがって襖を乱暴にけ、部をてった。 兄夫婦もまた、夫と義母を瞥することもなく、吐き気を催したような顔でに続いた。

静まり返った『松の』に残されたのは、座卓に突っ伏して震える夫と、髪を乱して呆然とち尽くす義母。 そして、私と美咲、倉田弁護士だけだった。

「せ、世体が……私の、所への顔が……」

義母が自の着物の裾を握りしめ、掠れた声で呟いた。 誰よりも所の目を気にし、派な姑を演じることに命を懸けてきた女。 その虚飾のが、今、完全に崩れった瞬だった。

私は、元でさく丸まっている夫を見ろした。

「正さん」

名を呼ぶと、夫が怯えたように顔をげた。 涙とでぐしゃぐしゃになった顔。かつて私がし、信じようとしていた男の面は、どこにもなかった。

「千鶴……頼む、許してくれ。魔が差したんだ。理とは今すぐを切るから……に戻ってきてくれ。やり直そう、な? 美咲のためにも……」

いつくばって私のスカートに縋りつこうとする夫の腕を、私はたく見ろした。

「美咲の名を、度とにしないで」

私の声には、りすら混じっていなかった。 ただ、どこまでもえ切った、絶対の拒絶があるだけだった。

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「婚にはします。ただし、倉田先を通じて、適正な財産分与、過の活費の清算、そしてあなたと宮原さんへの慰謝料を、法に則って円単位まで請求します。あのを売却してでも、全額支払っていただきます」

「そ、そんな……を売ったら、母さんはどうなるんだよ!」

「それは、あなたたちおの問題です。私はもう、あなたたちの都できる介護でも、代わりでもありませんから」

私は卓のの緑の婚届を指先で弾いた。

「きましょう、美咲。倉田先」

「はい」

美咲が私の腕にを添え、私たちは振り返ることなく部をた。

背から、義母の「千鶴さん! 置いていかないで! 私の面倒は誰が見るのよ!」という見苦しい鳴と、夫の啜り泣く声が追いかけてきた。 だが、その声が私のに届くことは、度となかった。

料亭のにると、はいつのにかがり、夜空には澄んだたいが吹き抜けていた。

く息を吸い込む。 胸の奥にこびりついていた、あのの匂いが、綺麗に洗い流されていくようだった。

「お母さん」 美咲が私の顔を覗き込んできた。 「……丈夫?」

「うん」 私は美咲のをく握り返した。 「ものすごく、すっきりしてる」

それからの数ヶは、涛のように過ぎった。

夫は会社で宮原理との倫関係、およびコンプライアンスのな問題が発覚し、方への遷が決まった。

退職は慰謝料と財産分与に消え、川の軒は売りにされた。 義母は、あれほど見していた介護保険の公サービスを使い、方の価な特別養護老ホームへ入所することになったという。あれほど執着していた「男の嫁の無償の介護」を永に失い、たい制度の枠組みので孤独な余を送っている。

そして、私と美咲のしい活が始まった。

川駅からしれた、築のさな賃貸マンション。 向きのリビングには、柔らかなの朝のが溢れていた。

狭いキッチンにち、私はさな平鍋でお湯を沸かしていた。 鰹節で丁寧に汁を取り、ネギとお豆腐を切る。 誰かの嫌を伺うためでも、「がい」となじられる恐怖に怯えるためでもない。 ただ、自分が美しいとう朝を、切なとべるための。

「お母さん、おはようー」

部着のまま、髪に寝癖をつけた美咲が目を擦りながら起きてきた。 休みを利用して、静岡から泊まりに来ていたのだ。

「おはよう、美咲。顔洗っておいで、もうすぐご飯できるから」

「はーい。……ん? お母さん、何か探してる?」

鍋のをめ、調料の棚ので首を傾げていた私を見て、美咲が笑った。

「あ、うん。お塩、どこに置いたっけ……さっきまでここにあったはずなんだけど」

その瞬、胸の奥底で、古い記憶の棘がチクリと痛んだ。

(また、忘れたの?) (あなたの、おかしいんじゃない?)

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