"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第13話
座には、青みがかった訪問着を着てお茶をすすっていた義母。 その隣に、夫の正。 さらに夫の兄夫婦、そして川の本筋にあたる叔父が座っていた。
酒杯を掲げようとしていた夫のが、ピタリと止まる。 その線が、私の隣につ倉田弁護士、そして制を私に着替えただけの美咲を捉えた瞬、夫の顔からサーッと血の気が引いた。
「……千鶴? なんだその格好は。それに……美咲!? なんでおがここにいるんだ!」
夫がちがりかけ、声を荒らげた。
「美咲は静岡にいるはずだろ! 親族の話しいに子どもを巻き込むな!」
「美咲はもう歳です。このの派な構成員よ」
私は靴を脱ぎ、部の央へ向かって歩踏みした。
義母が着物の袖を揺らしながら、扇子をパチンと畳のに叩きつけた。
「千鶴さん! なんて非常識なの! 連れてきたその男は誰よ! を親族の席にがりこませるなんて、やっぱりがおかしくなった証拠じゃないの! 叔父さん、見てくださいまし、この嫁の支滅裂な姿を!」
義母の甲い切り声が、座敷に響き渡る。 親戚の叔父が眉をひそめ、々しくをいた。
「千鶴さん、正から事は聞いている。君が最、精神に参ってしまって物忘れがひどく、庭を維持できないと。だが、話しいなら族だけで……」
「失礼いたします」
広告
叔父の言葉を遮るように、倉田弁護士がにて、懐から名刺入れを取りした。
「私、川千鶴さんの正当な代理を務めております、弁護士の倉田と申します。本は、川正氏による精神虐待、および法為の清算について、正式にお話しに伺いました」
弁護士の肩がた瞬、夫の兄夫婦が息を呑んだ。 夫の喉仏が、ゴクリと激しくする。
「な、何を言ってるんだ……! 虐待だと!? 俺がいつ千鶴を虐待した! 俺は病気になった妻を配して、療養先まで用してやったんだぞ!」
夫は懐から、通の類を乱暴に引っ張りし、私の目のの漆塗りの座卓に叩きつけた。
緑の枠線。 『婚届』の文字。 夫と、証欄には義母の署名押印が、すでに鮮に捺されていた。
「千鶴、おがこれ以暴れるなら、もうけはかけない! ここに署名しろ! おが病気なのは仕方がないから、慰謝料は請求しないでおいてやる! その代わり、と美咲の親権は俺が持つ! おは俺が配したアパートで、でをやせ!」
唾をばしながら捲してる夫の顔は、りと焦りで赤黒く歪んでいた。 自分を正義の側に置き、私を狂として処理するための、最のゴリ押し。
座敷にいる全員が、私を見つめていた。 泣き崩れるのか。 それとも、観してペンを取るのか。
私は、叩きつけられた婚届に指本触れなかった。
ただ静かにバッグのファスナーをけ、冊の分いクリアファイルを卓のに置いた。
トン、と乾いたい音が落ちる。
「……サインは、いたしません」
私の声は、驚くほど澄んで、座敷の隅々まで染み渡るように響いた。
「千鶴、お……!」
「私は狂っていません。物忘れの病気でもありません。今まで私が『物忘れをした』とされてきた来事はすべて――夫である正さんと、お義母様のおが、図に仕組んだ作です」
「な……何を馬鹿なことを!」 義母がちがり、着物の胸元を押さえて叫んだ。
「皆様、お聞きになりまして!? 被害妄よ! 自分が認症になりかけているのを、全部私たちのせいにしてるんですわ! 恥ずかしい! なんて恐ろしい嫁なの!」
「お義母様、どうぞお座りください」
私はファイルから、枚の診断を取りし、親戚の老である叔父のに滑らせた。
「先週、私が受診した内科クリニックの院による所見です。記憶能、認能検査、点満点点。『器質な異常は切認められず、精神疾患の兆候なし』。そして欄をご覧ください」
叔父が老鏡をかけ、類を覗き込む。
「『夫より、妻の精神障害を認める診断作成のい請があったが、医学根拠皆無のため即拒絶した』と、医師が確に記載しています」
叔父の眉がねがった。 線が、夫の正へと鋭く向けられる。
「正、これはどういうことだ? お、医者に嘘の診断をかせようとしたのか?」