"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第11話
美咲。私のたったの娘。 くの学で暮らしを始め、まだ歳のあの子に、こんな醜い沼を背負わせたくはなかった。
呼吸をして、通話ボタンを押す。
「……もしもし、美咲?」
『お母さん!?』
受話器の向こうから、切羽詰まった美咲の声がび込んできた。 泣き腫らしたような、微かに震える声。
『お母さん、今どこにいるの? 無事なの!?』
「美咲……丈夫よ。お母さん、京の由紀さんのところにいるから。配しないで」
『よかった……本当によかった……!』
美咲が激しく息を吐きす音が聞こえた。
『さっきね、お父さんから話があったの。「お母さんが急に暴れして、おばあちゃんを突きばしてをていった」って。「最お母さんのがおかしいのはってるだろ、探さないで警察に任せろ」って……お父さん、鳴り散らしてて……』
やっぱり。 夫は、娘にまでその毒を吹き込んでいた。
「美咲、ごめんね。怖いいをさせて……お母さん、本当にごめん」
無識に、いつもの謝罪の言葉がから零れ落ちそうになった。 、染み付いてしまった私の悪い癖。 何か揉め事が起きれば、まず自分が悪かったのだと縮こまる癖。
だが、それを遮ったのは、美咲のい言葉だった。
『お母さん、謝らないで』
「え……?」
『もう謝らないでよ! お母さん、何も悪いことしてないじゃない!』
受話器の向こうで、美咲がをすする音がした。
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『私ね、ずっと変だとってたの。お父さんとおばあちゃんが、お母さんに話しかけるときのあの目。お母さんが何か言うたびに、「また忘れたのか」「おはが悪い」って、でニヤニヤしながら責めてて……お母さんがどんどんさくなっていくのを見るのが、私、本当に辛かった』
涙が、私の目から溢れそうになった。 娘は、見ていたのだ。 私が隠そうとしていた痛みを、理尽を、ずっと側でじ取っていたのだ。
『これ、ずっと言おうか迷ってたんだけどね……』
美咲の声が、段とくなった。
『半、休みに実に帰ったときのこと覚えてる? 私が静岡に戻る、おばあちゃんが「お遣いあげるから」って、万円札の入った茶封筒をくれたの』
「うん……覚えてるわ」
『その封筒のにね、おばあちゃんのメモ用が、違えて枚紛れ込んでたの。……お母さんの記録だった』
の奥で、カチリと音がした。
『「〇〇分、千鶴さんガス止めたか確認せず」「〇、買い物から帰宅、鍵の所忘れ」って、全部お母さんの悪みたいなことが、細かく付入りでびっしりいてあったの。気が悪くて、私、お母さんに見せられなくて……でも、今ならわかる。あれ、最初からお母さんを追いすためにいてたんだよね!?』
全の鳥肌が逆った。
半。 あの頃から、すでに始まっていたのだ。
義母は帳をつけ、夫はでと段取りをつけ、がかりで私というを『壊れた妻』へ仕てげるための罠を、じわじわと張り巡らせていた。
「美咲……その、まだ持ってる?」
『うん。帳に挟んで、こっちのアパートに置いてある。写真撮って、今すぐお母さんに送る!』
美咲の力い声が、えた私の胸の底にを灯した。
『お母さん、私ね、お父さんたちの方なんか絶対にしないから。お母さんがどれだけして、どれだけ族のために尽くしてくれたか、私が番よくってる。だから……絶対に負けないで。もう、あののためになんてしなくていいんだよ』
「……美咲、ありがとう。本当に、ありがとう……」
涙が、止まらなかった。 交番ので流した惨めな涙ではない。 暗ので、信じえるが本、しっかりと私のを握り返してくれたことへの、温かい涙だった。
通話を終えて数分、美咲から送られてきた画像には、義母の湿な観察記録が鮮に写っていた。 またつ、あいつらの首を絞める縄が太くなった。
翌の曜、午。
倉田弁護士のによって、夫の勤務先である宅設備の千葉支社、および川の自宅宛てに、特定記録の内容証郵便が発送された。
『通:受任通および婚姻費用分担請求申予告』
その面が配達されたであろう刻から、わずかだった。
私のスマホが、狂ったように震え始めた。
画面には、夫の名。 度切れても、髪を入れずに度、度と着信がなる。