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"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第8話

この片は、何があっても渡さない。 あいつらが私に擦り付けようとした狂気の正体は、このさな付箋のにすべて詰まっている。

私は付箋を丁寧にジッパー付きのビニール袋に入れ、リュックの内ポケットの奥くへ滑り込ませた。

そのだった。

チャイムではなく、カギがガチャリと音をてて回る音が、静まり返った玄関から響いた。

臓が、ねがった。

計を見る。 分。 い。裁教が終わるには、まだ分もあるはずだ。

「あーあ、嫌になっちゃうわね。がりそうだからってく切りげるなんて……」

廊から、聞き慣れた義母の愚痴混じりの声がづいてくる。

逃げはない。 勝の鍵は、内側から閂がかけられている。 リビングのドアが、ゆっくりと押しけられようとしていた。

私はリュックを背負い、テーブルのから歩へた。

「……お義母さん」

ドアの隙から顔を覗かせた義母のきが、凍りついたように止まった。 にした傘が、フローリングのにカランと音をてて落ちる。

義母の目が、見かれた。 そこにあったのは、昨夜見せたような「優しい姑」の顔ではなかった。

獲物に逃げられそうになった獣のような、鋭く、醜い警戒のだった。

「千鶴さん……? あなた、どうしてここにいるの」

く、濁った声だった。

「荷物は……昨夜のうちに、全部まとめておいたはずでしょう?」

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義母の線が、私の背のリュックと、乱れた文机の引きしへと落ちた。

沈黙が、く張り詰める。 私の指先は、ポケットののスマホの録音ボタンを、確実に押し込んでいた。

義母の細い目が、すっとすがめられた。 獲物の喉元を狙う爬虫類のような、たく濁った線だった。

「千鶴さん……? あなた、どうしてここにいるの」

く、押し殺した声が玄関ホールに響く。

「荷物は……昨夜のうちに、全部まとめておいたはずでしょう?」

義母は濡れた傘を玄関のたたきに投げ捨てると、靴も脱がずにがりかまちへ踏み込んできた。 その目は、私が背負っているリュックと、引きしがいたままの文机をまっすぐに射抜いていた。

「あそこ、触ったの?」

「……自分の荷物を取りに来ただけです」

声が震えそうになるのを、奥歯を噛み締めて必に押し殺す。 ポケットので、スマホの録音アプリが静かに秒数を刻んでいる。 その事実だけが、え切った私の背骨を支えていた。

「自分の荷物?」

義母が嘲笑うようにを鳴らした。 歩、また歩と距を詰めてくる。 檀のの匂いが、異様な圧迫となって腔を突いた。

「このにあるものはね、爪楊枝本に至るまで、全部正が汗垂らして稼いだおで買ったものよ。専業主婦のあなたが『自分のもの』なんて言える筋いのものが、どこにあるの?」

「私が独代から持っていた預通帳と、実印です。それから、私の」

「? あんなのみんな、正がゴミ袋に詰めて玄関にしてくれたじゃないの!」

義母は廊の段ボールを指差して、声を荒らげた。

「せっかく正がね、のおかしくなった嫁のために、親切にもで静養できる部を見つけてきてくれたのよ? 敷だって正が払ってあげるって言ってるのに、何が満なの! 謝して、黙ってていけばいいのよ!」

『のおかしくなった嫁』。 その言葉を吐きした瞬、義母の元には隠しきれない優越が貼りついていた。

昨夜までなら、私はその言葉に縮みがり、「ごめんなさい」とをげていたかもしれない。 でも、もう違う。 リュックの奥には、さっきゴミ箱から拾いげた義母の付箋が入っているのだ。

『今の気代の督促状、予定通り米びつの裏に隠しておいたわよ』

あの呪いのような文字が、私の脳裏で炎のように燃えがっていた。

「……お義母さん」

私はまっすぐに義母の目を見据えた。 線を逸らさず、声を段く落とす。

「正さんの用したアパートには、きません」

義母の眉が、ピクリとねがった。

「は……? 何言ってるの、この期に及んで」

「ここは私のです。、私が守ってきたです。正さんと正式に話しいがつくまで、勝にていく気はありません」

「気なを利くんじゃないよ!」

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