"夫のスマホ「あの女は自分から出ていくよ」" 第6話
もう親戚にまで……」
震えるで差ししたスマホの画面を、由紀は眉をひそめてスクロールした。 読みめるうちに、由紀の瞳にたいりが宿っていく。
「回しがすぎるわね。完全に計画よ」
由紀はマグカップをテーブルに置き、私の目をまっすぐに見据えた。
「弁護士にはもう連絡を取ったわ。私の事務所がいつもお世話になってる、婚や事事件にいベテランの先。今の夕方、相談の枠を空けてもらった」
「夕方……」
「でも千鶴、そのにやることがある」
由紀の声は静かだったが、迷いがなかった。
「あのに戻りなさい。今すぐ」
「え……?」
わず声が裏返った。 あのに戻る? あんな恐ろしい所へ、もう度?
恐怖で引いた私のを、由紀が両でく包み込んだ。
「今なら正さんは会社よ。義母は? 曜の午、どこかかける予定はなかった?」
「あ……」
ののが、急速にれていく。
「曜のからは、駅の民センターでやってる裁教……義母が何も欠かさず通ってる習い事の」
「決まりね。正さんも義母もいない隙を狙って、あなたの『武器』を全部回収するのよ。実印、印鑑登録カード、預通帳、帳。それから、あのにある証拠になりそうなものは、屑枚残さず持ちすの」
由紀の言葉が、胸に突き刺さった。
「もしあいつらが鍵を替えたり、荷物を勝に処分したら、から取り戻すのは獄よ。
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今かないと、悔する」
のひらの汗をジーンズで拭った。 の震えは止まらない。 それでも、私は由紀に向かってさく、けれど確実に頷いた。
川へ戻る総武線の内は、昼の空いた帯だった。 窓のを流れる見慣れた景が、まるで異国ののようにくじられる。
、私はこので暮らしてきた。 スーパーの特売を覚え、商の顔見りと挨拶を交わし、夫の好みにわせて汁を引き、義母の嫌を損ねないよう息を潜めて歩いてきた。
そのすべてが、偽りの平穏だった。
駅から宅へと続く坂を登る。 が鉛のようにい。 角を曲がり、見慣れた階建ての軒が界に入った瞬、喉の奥がキュッと締まった。
ガレージに夫のはない。 義母の軽な自転も、玄関脇の定位置から消えている。
計を見る。 午分。 義母が戻ってくるまで、とし。
震える指でキーケースから鍵を取りし、シリンダーに差し込んだ。 カチャリと属音が静かに響き、ドアノブを回す。
玄関の隙から流れてきたのは、檀のおと柔剤が混ざりった、あのの匂いだった。 いつもなら「ただいま」と声をしていたはずの空。 今は、息を吸い込むことすら吐き気がする。
靴を脱ぎ、忍びで廊にがった瞬、私のがピタリと止まった。
廊の突き当たり、リビングへ続くドアの脇に、見覚えのない巨な茶い塊がつ並んでいた。
段ボール箱だった。 ガムテープで厳に目張りされた、引っ越し用のきな箱。
その面に、黒い極太のマジックで、乱暴な殴りきがされていた。
『千鶴の私物(類・用品)』
義母の跡だった。
血の気が、気にから引いていく。 呼吸が浅くなり、界の端がチカチカと滅した。
昨夜、夫から届いたメッセージ。 『おの荷物、母さんと緒にスーツケースつにまとめておいたから』
スーツケースどころではない。 あいつらは、私がいないに私の部を漁り、私の着を、を、化粧品を、ゴミのように段ボールに詰め込んだのだ。
まだ婚も成していない。 別居のすらしていない。 このの半分は、私が守り続けてきた所のはずなのに。
段ボールの角に触れる。 のたさが、指先を通して臓に突き刺さる。
(……泣くな。今は泣いているじゃない)
奥歯をギリギリと噛み締め、涙を力任せに押し戻した。 ここでち尽くしていたら、義母が帰ってきてしまう。
私は背負ってきたリュックをろし、階の寝へと駆けがった。
クローゼットをける。 案の定、私のが掛かっていたスペースはごっそりと空配になっていた。 引きしのも、掻き回されたように乱れている。
私はドレッサーの奥、鏡の裏にある隠しポケットにを伸ばした。