みかん小説
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"18年消えていた母の第一声は「手取りいくら?」" 第15話

とだけ答えた。 嘘は吐かない。 無理に仲の良い親子を演じる必なんて、どこにもないのだから。

曜の夕暮れ。 スーパーで祖母に頼まれた買いしを済ませ、両にレジ袋を提げて歩く。 の柔らかいが、宅の桜の枝を揺らしていた。

角を曲がると、見慣れた造階建てのが見えてきた。 玄関の磨りガラスの向こうに、温かいオレンジのかりがぽっと灯っている。 ガラガラ、と引き戸をけると、ばしい汁と、噌の匂いがふわりと腔をくすぐった。

「ただいま」

声をかけると、奥の台所から、パタパタとスリッパの音が響いてきた。 い割烹着を着た祖母が、ひょっこりと顔をす。

「あら、音。おかえり。かったねぇ」

祖母の目尻に、くしゃりと優しい皺が寄る。 には、ネギを刻んでいた包丁が握られていた。

「かったでしょう。今、お豆腐の噌汁作ってるからね。すぐご飯にするよ」

「うん、伝うよ」

靴を脱ぎ、板張りの廊にをげる。 の裏に伝わる、慣れ親しんだのたさと、奥から漂ってくる夕飯の匂い。

歳のあの。 母親が消えて、世界から放りされたような絶望のにいた私を、この玄関で抱きしめてくれたがいた。 「丈夫だよ、音」と涙を拭ってくれたがいた。

私はずっと、自分は母親に捨てられた、欠落しただとい込んできてきた。

母親がいなければ、本当の族はに入らないのだと信じ込んでいた。

でも、違った。

、のものも、私がに帰るたびに台所から顔をして、「おかえり」と言ってくれた。 私のために皺を増やし、私のためにをげ、私のためにき抜いてくれた。

そのが、最初からずっと、私に完全な『』をくれていたのだ。

「おばあちゃん、今の根、すごくいいのかったよ」 台所にち、祖母の隣に並んでレジ袋を広げる。

「そうかい、ありがとねぇ」 笑いう祖母の横顔を見つめながら、私はので静かに息を吸い込んだ。

もう、来ない迎えを待つ歳の私はいなかった。 私は私のでち、してくれたのを握って、をきていく。

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