みかん小説
本棚

"赤ペンの死線と消えた五年間" 第7話

目のには、ハルカが加減なしで選別した『学入学共通テスト・考力化型実践問題集』が鎮座している。 「駄目よ、レン。まだ数列の群数列と漸化式の文章題が問残ってるわ。『公式を覚えているから解ける』ではなく、『条件の規則性が現実の事象とどう対応しているか』を言語化できるようになるまでがノルマよ」

ハルカはめかけた杯目のアールグレイを元に運びながら、元の赤ペンを回した。 その、レンの制のズボンのポケットで、スマートフォンが激しく振した。 ブー、ブー、ブーと回。ただのメッセージ受信ではなく、着信だ。画面を見ると、ディスプレイには『武藤先』の文字が表示されていた。

「げっ……武藤からだ」 レンは顔を引きつらせた。 「なさいよ。本史の追試の程変更か何かじゃない?」 レンは恐る恐る親指をスライドさせ、通話ボタンを押した。 「……もしもし、相良です」 『おお、相良か! まだ駅にいるか!?』 受話器の向こうからび込んできたのは、いつもの職員での落ち着いたトーンではなく、らかに揺し、息を切らせている武藤先の声だった。 「え、あ、はい。駅のファミレスでと勉してますけど……どうしたんですか?」 『も緒か! 頼む、今すぐ学の職員裏の第資料に来てくれ! おたちの脳が必なんだ!』

分。

広告

夜の気がち込めるの敷内へ、レンとハルカは駆け戻っていた。灯に照らされた舎は昼の喧騒が嘘のように静まり返り、渡り廊のガラス窓がでカタカタと軋んでいる。 階の奥、普段は施錠されているはずの『第資料』の扉が細くいており、そこから漏れる蛍灯のかりので、腕組みをして眉を揉んでいる武藤先の姿があった。

「先、体何があったんですか?」 ハルカが息をえながら入すると、武藤先は疲れ切った顔をげた。その元には、数枚のプリント用が散らばっている。 「……今回の本史の定期テストの答案用が、クラス分、丸ごと紛失したんだ」 「はあ!?」レンが叫んだ。「俺のあの『秀吉』の答案用もですか!?」 「いや、相良の答案は採点済みで返却しただろ。消えたのは、返却予定だった組の答案用だ」

武藤先の説によると、事の経緯はこうだった。 夕方頃、武藤先が第資料で組の答案用枚の採点を終え、保管用の鍵付きスチールキャビネットに入れようとした。その直、急な職員会議に呼ばれ、資料の鍵を閉めて会議へ向かった。 会議が終わり、分に戻ってみると――机のに置いてあったはずの組の答案の束が、跡形もなく消えっていたのだという。

部の窓は内側から施錠されたままで、ピッキングの痕跡もない。資料の鍵を持っているのは武藤先を含めての学主任クラスの教師だけだ。

「部からの侵入者じゃないわね。密だわ」ハルカが周囲を見回す。「でも、先。ただ盗まれただけなら、私たちを呼ぶ理由にはならないはずです。警察か学主任に報告すべきでは?」 「それがな……机のに、こんな奇妙なメモが残されていたんだ」 武藤先が震えるで差ししたのは、枚の方だった。そこには定規を使ったような無質な幾何学配列で、数字と記号が記されていた。

$$S_1 = 3$$

$$S_2 = 7$$

$$S_3 = 13$$

$$S_4 = 21$$

$$S_5 = 31$$

$$\text{TARGET} = S_{10} \times \Delta t - [ \text{ROOM} ]$$

『の朝までに答案のあり処を特定できなければ、すべての答案用は焼却炉のとなる。ヒントは、この学の階層構造と数列の調にある』

レンはそのメモを覗き込み、わず呻いた。 「なんだこれ……階差数列か?」 「よく見ろ、相良」武藤先が額の汗を拭う。「俺は本史の教師だ。歴史の号ならいくらでもに入っているが、こういう数学な暗号はさっぱりなんだ。だが、おは理系で、は論理パズルにい。頼む、になれば問題になる。力を貸してくれ」

レンはシャーペンをポケットから引き抜き、に膝をついてメモ用を凝した。 「ハルカ、これ、完全に数列だ。隣りう項の差を見てみろ」

$S_2 - S_1 = 7 - 3 = 4$

$S_3 - S_2 = 13 - 7 = 6$

$S_4 - S_3 = 21 - 13 = 8$

$S_5 - S_4 = 31 - 21 = 10$

「差が $4, 6, 8, 10$……偶数の等差数列になっている。つまり階差数列だ」 レンの計算脳が、驚異な速度で回転し始める。 第 $n$ 項の般項を求める公式:

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: