"赤ペンの死線と消えた五年間" 第6話
を選んだ(確率 $\frac{1}{3}$)
司会者は、もうつのハズレである「扉B」をけるしかない。 ここで挑戦者が【扉を変えた】
、残っている扉は「扉A」しかないので、これまた自に
アタリになる。
ハルカはペンを置き、をじっと見つめた。
「どうかしら? 扉を【変えなかった】
、当たるのは最初にアタリを引いていたケース1だけ。つまり確率は
分の(約33%)
。 けれど、扉を
【変えた】、ケース2とケース3の両方でアタリを引くことになる。つまり確率は
分の(約67%)
にねがるのよ」
「な……っ!?」 藤堂が息を呑み、レンがを乗りしてナプキンを凝した。
「嘘だろ……!? なんで扉を変えるだけで確率が倍になるんだよ!? 残った扉はつだぞ!」
「レン、君の誤謬の原因は『司会者が作為にハズレを排除した』
という事報を無している点にあるわ」 ハルカは差し指をてた。 「もしも、何もらない赤ん坊が偶然ドアをけて、たまたまそれがハズレだったのなら、残りの確率は分のずつよ。でも、司会者は『アタリの所をっていて、絶対にアタリをけない』というい制約(ルール)に従ってしているの。 つまり、司会者がハズレをけて見せたという為によって、
『最初にハズレを選んでいたという運な報』が、すべて『もう片方の扉がアタリであるという報』へと濃縮されて転換されたのよ」
広告
レンはを抱え、唸り声をげた。 「報の……濃縮……」
「最初に挑戦者がハズレを選んでいる確率は分のもあったのよ。その『分のの確率でハズレを選んでいた自分』を信じて扉を変えれば、司会者の誘導のおかげで、そのまま分のの確率でアタリを拾える。これが、条件付き確率の真実よ」
藤堂はナプキンの図をい入るように見つめ、やがてパッと顔を輝かせた。 「す、すごい……! 完全に筋が通ってます! 直だと絶対に分分に見えるのに、形図できすと完全に分のだ! 先輩、これ、そのままクラスの連に見せて論破してきます!」
藤堂はナプキンを丁にバインダーに挟むと、「ありがとうございました!」とをげて嵐のようにファミレスをびしていった。
再びだけの静寂が訪れたテーブルで、レンはめきったメロンソーダをじっと見つめていた。
「……なぁ、ハルカ」 「何かしら、まだ確率のに囚われているの?」
「いや……そうじゃなくてさ」 レンは自嘲気に笑った。 「俺、数学の計算は誰よりも速く解ける自信があったんだよ。公式を当てはめて、式を理して、答えをす。それだけなら学でもトップクラスだとってた。……でも、今でいらされたよ。俺は『提』も『定義』も『状況の構造』も何つ見ちゃいなかった。ただ数字の記号だけを追っかけて、現実の何を解いているのか全く分かってなかったんだ」
歴史のテストでの「秀吉の」。 図での「未返却本の集のズレ」。 登の「速度との非対称性」。 そして、学園祭の「作為な報による確率の偏り」。
「全部同じだ。俺は問題の枠組み(フレーム)の側にあるルールを勝に自分の都の良い常識で補完して、違った式をててたんだな」
ハルカはそんなレンの横顔を見つめ、しだけ目元をらげた。 そして、鞄から冊の分い問題集を取りし、ドサリと机の央に置いた。
「気づけたなら、来よ。計算力があるが、問題の本質な構造を見抜く目をに入れたら――それはもう、無敵なんだから」 ハルカは悪戯っぽく微笑み、赤ペンをレンのに握らせた。
「さあ、反省会は終わり。ここからは本史の追試対策と、共通テスト数学の文章題特訓よ。今夜は君が『よく考える』ようになるまで、歩も帰さないからね」
「……加減してくれよ、論理の鬼」 レンは苦笑いしながらも、どこか吹っ切れた表でペンを構え、目ののいノートへと向かい直した。
ファミレスのドリンクバーの械が、ゴオとい音をてて媒を循環させていた。計の針は午半を回り、周囲のボックス席では会社員の組が類を広げながら愚痴を言いっている。
「……なぁ、ハルカ。息つかないか?」 レンは机のに突っ伏し、ノートの端を指でカリカリと引っ掻いた。