"赤ペンの死線と消えた五年間" 第2話
レンの目つきが変わる。数式に落とし込まれた途端、自分が犯したミスの構造が完璧に理解できてしまったからだ。
「……ぐうの音もない」 「分かればよろしい。でもね、レン。君のこの絡な『条件の読みばし』、テストの点数だけなら笑い話で済むけれど、実は今、これと全く同じ構造の厄介な問題が図で起きているのよ」
ハルカはペンを置き、しトーンを落としてレンを見据えた。その瞳には、な好奇と悪戯っぽいが宿っていた。
「……何が起きてるんだ?」 「消えた図委員会の予算と、返却されたはずの『冊の禁帯本』。みんな君みたいに『数字の計算はっているのに、提の言葉の定義を違えている』せいで、犯扱いされている徒がいるの。どう? その当に引かれた点分の悔しさ、リアルな数理パズルでらしてみない?」
レンは自分の机のの答案用をもう度見た。「×」の赤インクが、夕ので奇妙に鮮やかだった。 彼はニヤリと敵に笑い、シャーペンをくるりと回した。
「面い。幽霊の秀吉の無、その謎解きでらしてやるよ」
放課の廊に伸びるを踏みながら、レンとハルカは静まり返った特別棟へと向かっていた。階段をがるごとに運部の喧騒はのき、代わりにワックスの匂いと古いのりが濃くなっていく。
広告
階の突き当たりにある図の引き戸をけると、カウンターの奥での男子徒がを抱えていた。図委員を務めるの向井(むかい)だ。
「……あ、先輩。来てくれたんですね」
向井は力なく顔をげた。その表は、先ほどテスト用を見て絶望していたレンの顔と瓜つだった。
「状況はどう、向井くん?」 ハルカがカウンターに歩み寄り、落ち着いた声で尋ねる。
「最悪です。来週の監査をに、図の特別予算で購入した『貴復刻シリーズ』全巻が所なんです。館内閲覧のみの禁帯本なんですが、貸記録も防犯ゲートの作履歴もありません。それなのに、昨の閉館点検で忽然と消えていて……」
向井の説によると、昨この図を利用したのは、放課に残っていた図委員名と、調べ学習をしていた徒数名だけだったという。そので、閉館直まで特別閲覧スペースにいたのは、文学部志望の、伊達(だて)だった。
「伊達先輩は『本はちゃんと元の架に戻した』って主張しているんです。でも、架には冊もない。しかも、昨の当番記録を見ると、解なメモが残っていて……」
向井が差しした誌の端には、伊達のきでこうかれていた。
『本、貴シリーズ全巻を閲覧。午の点で残りは巻。
閉館の午半までにすべての本を返却棚に戻した。計算、元に本は冊も残っていない』
「これを見てください」 向井は悔しそうに拳を握った。 「半の点で冊すべて棚に戻したと言っているのに、架にも返却棚にも冊もないんです。の点で『残り巻』なら、戻せるのは最でも巻のはずじゃないですか。最初から巻をどこかに隠して持ちしたとしかえません!」
レンは誌のメモを覗き込み、腕を組んだ。 「なるほどな。巻あるうち、の点で元に巻あったなら、差っ引かれた巻はどこへったんだって話か。5−2=3。消えた巻と、残りの巻。数字の辻褄がわない」
「レン、また条件をすっばして引き算だけで考えてるでしょ」 ハルカが呆れたようにため息をついた。
「え? だってそうだろう。冊冊が元にあるなら、残りの冊はすでにどこかへ移していなきゃおかしい」
「それは『すべての本が同じ状態にある』という提を勝に置いているからよ。さっきのテストと同じね。きていないがきている数を計算しようとしたのと、本質は変わらないわ」
ハルカはカウンターに置かれていたメモ用とペンを取りげると、素くつの円を描いた。
「いい、レン、向井くん。集と述語論理の基本にち返るの。
伊達先輩がいた『元にある』という述語と、『閲覧した』という述語の定義域が致しているとは限らないわ」