"リフォーム代二百万を払った実家に、他人が住んでいた" 第9話
「……始まったわね」
母がぽつりと呟きました。 その声は、驚くほど静かで、徹でした。
「お母さん、りる?」
「いいえ。まだよ。 あの子が、自分で積みげた嘘に押し潰されるところを、ここで見届けてからよ」
実のにった兄は、誇らしげに親戚同……ではなく、義理の族と務のスタッフを引き連れて玄関へとみました。
「母さんも、観してでたい麦茶でも用して待ってるだろ。 おい真由美、産のメロン持ってこいよ」
兄はポケットから、ジャラジャラと音をてて自宅の鍵束を取りしました。 そのから、昔から持っている真鍮の実の鍵をつまみげます。
「さっさとに入って、解体事の最終打ちわせを終わらせよう。 今は俺の奢りで、駅のい寿司を取ってやるからな」
盤振るいをする兄の姿に、義姉の母親は「まあ健さん、頼もしいわ!」とを叩いてんでいました。
兄は満面の笑みで、鍵を玄関の鍵穴へと差し込もうとしました。
カチッ。
乾いた属音が響きました。 鍵は、先の数ミリしか入りませんでした。
「……あ?」
兄のきが止まりました。 眉をひそめ、鍵を度引き抜いて、鍵穴を覗き込みます。
もう度、力任せに押し込もうとしました。 ガリッ、ギギッと嫌な音がするだけで、奥まで全く入りません。
「なんだこれ。
広告
……おい、真由美、鍵が回らねえぞ」
「ちょっと、健さんしっかりしてよ。違う鍵なんじゃないの?」
「そんなわけねえだろ! 親父がきてたから使ってる鍵だぞ!」
兄の額に、じわりと嫌な汗が滲み始めました。
焦りと苛ちから、兄は鍵穴に体をかけるようにして力任せにガチャガチャとに揺すり始めました。 しかし、最式のシリンダー錠は、無骨な古い真鍮の鍵をたく拒絶するだけです。
「くそっ、何なんだよ! 親父がんでから油でも差してねえのか!?」
の限界に達した兄は、ドンドンッ! と乱暴に玄関ドアを掌で叩き始めました。
「おい、母さん! けろ! にいるんだろ! 客をで待たせる気か! く鍵をけろって言ってんだよ!」
静まり返った宅に、号が響き渡りました。 所ののカーテンが、審そうにサッとくのが見えました。
義姉の母親が、傘を握り直しながら眉をひそめました。 「ねえ健さん、お義母さん、本当ににいらっしゃるの? こんな炎で待たされるなんて、お化粧がドロドロになっちゃうわよ」
「す、すぐけさせますから! おい母さん!!」
兄が再びドアを蹴ばそうとを振りげた、その瞬でした。
ガチャリ。
な属音がして、内側のサムターンが回る音がしました。
「ほら見ろ、やっとけやがった」
兄は勝ち誇った顔でドアノブにをかけ、勢いよく引きけました。
「遅いんだよ母さん! 何分待たせ……」
兄の言葉が、喉の奥で氷つきました。
ぽかんといた兄のから、ヒュッと息が漏れました。
いたドアの向こうにっていたのは。 髪交じりの母ではありませんでした。
涼しげな麻のシャツを着て、首にフェイスタオルを巻いた、見らぬ代半の男性でした。 には、荷解き作業用とおぼしき軍とカッターナイフを持っています。
背の玄関ホールには、真しい段ボール箱が然と積まれ、爽やかなフローリングのワックスの匂いが漂っていました。
「……はい? どちら様でしょうか」
男性は、汗だくで突っっているスーツ姿の兄と、傘をさした派な女性たちを、怪訝そうに見つめました。
玄関先が、完全な静寂に包まれました。 セミの声だけが、嘲笑うようにくで鳴り響いています。
「……え?」
義姉の真由美が、掠れた声を漏らしました。
兄は数秒、瞬きすら忘れたように固まっていましたが、やがて全の血がに登ったように顔を真っ赤に染めげました。
「な、なんだおは!!」
兄の絶叫が、玄関ポーチに炸裂しました。
「誰だお! の実に勝にがり込んで何してやがる! 棒か!? おい、棒だ! 警察を呼べ!」
男性は怯えるどころか、呆れたようにため息をつき、静かに首を横に振りました。
「棒? 何を仰っているんですか。
声をすのはやめてください。所迷惑ですよ」
「ふざけんな! ここは俺の実だ! 親父が残した、佐藤のだぞ! おみたいな見らぬ男が、なんでがり込んでんだって聞いてんだよ!」