"リフォーム代二百万を払った実家に、他人が住んでいた" 第7話
『佐藤様、着準備はお預かりしておりますが、解体届と建築確認の申請には、産の登記事項証と、現所者様であるお母様の印鑑証、委任状がどうしても必です。 これらが揃いませんと、を組むことも資材を現に搬入することもできません』
健は必で取り繕っていたに違いありません。
「母は父をくしたショックで体調を崩している」 「委任状は来週には確実に持参する」 「資材のキープだけは絶対にすな、キャンセルしたら承しないぞ」
自分の虚栄と、義母へのと、すでに支払ってしまった百万円の焦りから、健は嘘に嘘をね、自ら逃げのない沼へとを踏み入れていたのです。
の終わり。 照りつけるような差しの、駅の方の応接で、静かに、そして厳粛に売買契約と残決済が執りわれました。
買主のご夫婦、仲介の佐々さん、そして司法士の先が同席する、母は背筋を伸ばしてペンをらせました。
産売買契約。 事項説。 登記原因証報。
実印に朱肉をつけ、いのに寸分の狂いもなく印を刻んでいく母の元には、切の迷いも震えもありませんでした。
「子様、これにて買主様からの売買代の着が確認できました。 本付で、所権移転の登記申請を法務局へ提いたします」
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司法士の先の言葉を聞いた瞬、私の目からわず涙が溢れそうになりました。
売却代は、母がしく設した個座へ、全額がそのまま振り込まれました。 古いの処分費用を差し引いても、母がこれからの数、全なマンションで何自由なく暮らしていけるだけの分な額でした。
「ありがとうございました」
母は同席した全員に向かって、く、くをげました。
「これで、私の肩の荷がりました」
その顔には、法事のに見せた痛々しい絶望のは、もうどこにもありませんでした。
に入り、お盆まであと週となったの朝。
私たちは極秘裏に、引っ越し作業をいました。
所のたちに余計な詮索をさせないよう、佐々さんが配してくれた引っ越し業者は、社名の入っていない目たないトラックでやってきました。
型の具やは、買い取ってくれた若いご族が「解体に括して専業者に処分してもらうので、置いていって構いません」と承諾してくれていました。 運ぶのは、母の、最限の調理器具、布団、そして本当に切ないの品だけです。
居の壁に掛けられていた、古い柱計。 私がまれたに、父が嬉しそうに買ってきたという、ゼンマイ式の振り子計です。
カチ、コチ、とく優しい音を刻み続けてきたそれを、母はおしそうに両で抱え、丁寧に緩衝材で包みました。
「これだけは、連れてかないとね」
荷物の積み込みは、わずか半で終わりました。
がらんとした実の玄関先で、佐々さんがち会いのもと、しいシリンダー錠への交換作業がわれました。 古い真鍮の鍵穴がされ、ピカピカにる最のディンプルキーの錠が取り付けられます。
カチャリ、とな属音が響き、ドアが施錠されました。
これで、健が持っている実の鍵は、ただの無な属の棒になりました。
そして、玄関の脇にある柱ので、母はち止まりました。
そこには、父が、で丁寧に『佐藤』といた、古びたヒノキの表札が掲げられていました。 に晒され、文字の墨はしれていましたが、確かに父がこのを守ってきた証でした。
佐々さんがドライバーをに、申し訳なさそうに母を見ました。
「されますか?」
「ええ」
母は静かに頷きました。 ネジがされ、コトンと乾いた音をてて表札が母の掌のに収まりました。
母はぬぐいでその埃を優しく拭い、胸のにしっかりと抱きしめました。
「お父さん、きましょう」
母は度も実を振り返ることなく、私のを取って歩きしました。
に乗ってりる際、私は助席の窓から、無になった実の柱を見つめました。 そこには、しい買主の苗字が印字された、仮のプレートがしっかりと取り付けられていました。