"リフォーム代二百万を払った実家に、他人が住んでいた" 第5話
百万円。 ポンと払えるような額ではありません。
兄の会社は、何もから資繰りに追われているはずでした。 父がきていた頃から、何度も「取引先への支払いが」「今だけ乗り切れば」と泣きついては、父の虎の子の貯をいつぶしてきたのです。 それなのに、なぜ。
「由紀? 何を突っっているの」
奥の廊から、母の音が聞こえました。 私は咄嗟に領収を背に隠そうとしました。 けれど、もう隠し通せるような事態ではありませんでした。
振り返ると、母は私の張った表を見て、すぐにただ事ではないと察したようでした。
「……何を持ってるの?」
私は迷った末、つ折りのを母のに差ししました。
「さっき、お兄ちゃんが落としていったの。 務との契約……もう、おを払ってる」
母はメガネをかけ直し、震える指先でそのを広げました。 赤く押された『領収』の文字と、百万という数字。
母の線が、そこに数秒張り付いたままきませんでした。 取り乱して叫ぶかといました。 ですが、母のから漏れたのは、信じられないほどえ切った、乾いた吐息でした。
「……真由美さんの定期預ね」
「え?」
「先、真由美さんが珍しく産を持ってで来たのよ。 『健さんがを買い替えたいってうるさくて、私の独代の貯と用の積を崩せって言うんです』って愚痴をこぼしていたわ。
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ちょうど百万くらいあるって、自分で言っていたもの」
背筋に、たい汗がツーっと流れ落ちました。
義姉は、自分の母親をこのに呼び寄せるため、そして夫が「男として実を仕切る」という見栄を信じ込んで、虎の子の貯を兄に預けたのです。 そして兄は、母の承諾も得ていないのに、それをそのまま務に叩きつけた。
堀を埋めてしまえば、老いた母親なんて泣き寝入りして従うに決まっている。 そうを括って。
「あの子はね、昔からそうなのよ」
母は領収を綺麗に折り畳み、仏壇の横の引きしへ静かに戻しました。
「相が嫌がっていても、先に既成事実を作ってしまえば自分のい通りになるとっている。 お父さんも、そうやって何度もあの子の借を肩代わりさせられたわ。 ……でもね、由紀。私はもう、お父さんじゃないの」
母は私の方を向き、さく、けれど固く頷きました。
「産さん、今来られるかしら。 待っているはないわ」
そのの午。 紹介してもらった元の産仲介会社の担当者、佐々さんが実を訪れました。
佐々さんは代半ばの、落ち着いた物腰の男性でした。 居に通され、名刺を差しした佐々さんは、母が差しした『登記事項証』に素く目を通しました。
「確認いたしました。
くなられたお父様からの相続登記は、法務局で完全に完しておりますね。 現の所権は、佐藤子様、おにございます。 法に、子様の単独のご志のみで、売却、譲渡、解体を含めた切の処分が能です」
そのな言葉に、私は胸を撫でろしました。 隣に座る母も、く息を吐きしました。
「佐々さん、お願いがあります」
母は背筋を正し、両を膝ので揃えました。
「できるだけく、このを買い取ってくださる方を探していただきたいのです。 男が……勝にリフォームをめようとしていて、いつ事のを連れて押し入ってくるか分かりません。 盂蘭盆のまでに、すべてを終わらせたいのです」
普通なら、産の売却には数ヶから半はかかります。 お盆まで、あとヶもありませんでした。 無茶な相談だとは分かっていました。
しかし、佐々さんは帳をき、真剣な差しで母を見つめました。
「子様、実を申しげますと、この域は学区の評判が非常に良く、駅の戸建て用を探していらっしゃる子育て世帯のお客様が、弊社の顧客リストに何組かいらっしゃいます。 もし、築数相応の建物解体を提とした現状姿での引き渡し、かつ相よりほんのしだけ柔な価格設定をご承いただけるのであれば……週以内に契約をまとめられる買い当たりがございます」