みかん小説
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"リフォーム代二百万を払った実家に、他人が住んでいた" 第2話

「由紀」

背から、かすれた声で名を呼ばれました。 振り返ると、母が台所の入りにち、私をじっと見つめていました。

顔は青く、法の疲れもあって、今にも倒れてしまいそうに見えました。

「お母さん、座ってて。今、温かいお茶淹れ直すから」

「いいの。それより、ちょっと仏に来てちょうだい」

母の取りは、いつになく真っ直ぐでした。 々しく背を丸めていた法事の席での姿とは、何かが決定に違っていました。

仏壇のに座ると、父の遺が穏やかな笑みを浮かべてこちらを見つめています。 母は仏壇の引きしをけ、番奥から古びた桐の箱を取りしました。 からてきたのは、透なクリアファイルに几帳面にとじられた、何枚かの公な類でした。

番に見えた文字に、私の臓がドクンとねました。

『登記事項証』 そして、そのにあったのは『遺産分割協議』でした。

「お母さん、これ……」

「お父さんが倒れたときね、司法士の先に入ってもらって、きちんと続きを済ませていたのよ」

母の声は、驚くほど静かで、透き通っていました。

「お父さんはずっと配していたの。 健が見栄っ張りで、会社の経営がき詰まるたびに実に無に来ていたこと。 自分がんだら、あの子が必ずこのを自分のものだと主張して、暴挙にるだろうって」

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類の権利者欄には、はっきりと母の名が印字されていました。 『所者 佐藤子』

父の、預貯のわずかな配分も含めて、すべての法続きはとっくに完していたのです。 兄の健も、そのしのぎで「とりあえず名義はお袋にしておけばいい」と適当に実印を押してしていたはずでした。 あいつののでは、「名義が誰であれ、男である自分が実質な所者だ」という勝ない込みが、法な事実をきしていたのでしょう。

「健はね、私が何もらない、何も決められないれな寄りだとっているのよ」

母のが、類の端を静かになぞりました。

「でもね、由紀。私、もう限界なの」

母の瞳から、粒の涙がポロポロと畳のにこぼれ落ちました。 声を取り乱すこともなく、ただ静かに、溜め込んできた苦しみを吐きすように。

「このは広すぎるわ。漏りがすれば修繕に何万もかかり、庭のむしりだけで腰が砕けそうになる。 スーパーも病院もくて、を放したらきていけない。 それなのに……あの子たちは、ここに真由美さんのお母さんを連れてくるって言ったわね」

私の喉の奥が、ぎゅっと締め付けられました。

「リフォーム代もさず、維持費も払わず、私に真由美さんのお母さんの介護を押し付ける気よ。

目に見えているわ。あの子たちの『同居してやる』なんて言葉は、ただの無料の政婦とが欲しいだけ」

母は顔をげました。 涙をぬぐったその瞳の奥には、々しさなど微もありませんでした。 たく研ぎ澄まされた、いが宿っていました。

「由紀。私、このを売ります」

息が止まりそうになりました。

「売るって……お父さんとのいが詰まった、このを?」

「いは、私の胸のに全部あるわ。 あの子たちに奪われて、借のカタにされるくらいなら、私ので綺麗さっぱり片付けたいの。 そしてね……あなたのむのくに、さくて全なマンションを借りたいのよ。 歩いて買い物にけて、病院があって、誰にも脅かされない所へ」

母の言葉は、決してな当てつけではありませんでした。 自分の残されたを、としての尊厳を持ってき抜くための、あまりにも現実で、切実な防策でした。

私は母の膝のにねられたを、両でしっかりと包み込みました。

「わかった。お母さんがそう決めたなら、私が全力で伝う。 あのには、絶対に歩も譲らないから」

母が、今初めて、さく微笑みました。 それは、連れ添った夫を見送り、毒息子と決別することを誓った女の、覚悟の笑顔でした。

それから週の曜の朝。

事態は、私たちの予を遥かに超えるスピードで、最悪の方向へと転がり始めました。

私は母の依頼を受けて、元の産会社に査定の相談をするため、朝から実を訪れていました。

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