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"意識のない母の家を売る夫、その時病室のベルが鳴った" 第7話

私は見ろした。 にいつくばる夫の頂部を、底からの軽蔑を込めて見ろした。

「母は識を取り戻したばかりなのよ。まだ半もかない、言葉だってやっと絞りしている状態なのよ。その母に、あんたたち親子の借を埋めるためにを売れって、座して頼めって言うの?」

「たった枚だ!」

夫が勢いよく顔をねげた。 涙とでぐしゃぐしゃになった顔。 血った瞳が、異様なを宿している。

「委任状に、お義母さんの親指を朱肉につけて、判を押させるだけでいい! 類は俺が全部作ってある! 識があるなら、指をかすことくらいできるだろ!? たったそれだけで、俺は助かるんだ!」

「断るわ」

秒の躊躇もなく、私は言い放った。

「絶対に、母のは売らせない。母自がさっき『売らない』とはっきり言ったのよ。あのは、母が父と過ごした切な所よ。あんたたちの沼の借のために差しす義理なんて、爪の先ほどもない」

「真紀ッ!」

夫がからちがり、私の肩を乱暴に掴んだ。 指が肉にい込み、痛みがる。

「お、自分が何を言ってるか分かってんのか!? 俺が逮捕されるんだぞ!? 詐欺で科者になるんだぞ!?」

「自業自得よ」

「自業自得で済むかよ!」

夫の声が、夜の狭いリビングに鳴のように轟いた。 形相が、願から純粋な狂気へと塗り替わっていく。

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「俺が科者になったら、このはどうなる!? 会社を懲戒解雇されて、世に顔向けできなくなるんだぞ! おだって『犯罪者の妻』ってろ指をさされるんだ! それだけじゃない、奈緒はどうなるんだよ!?」

娘の名がた瞬、私の背筋がピシリと凍りついた。

「奈緒は来、指定推薦で学にくだろうが! 父親が詐欺で捕まったら、推薦なんて発で取り消しだ! 就職も、結婚も、あの子の輝かしい未来が全部めちゃくちゃになるんだぞ! おはそれでもいいって言うのか!?」

「卑怯者……!」

私は夫のを力任せに振り払った。

「自分の罪を棚にげて、娘を盾にするの!? 奈緒の未来を壊そうとしてるのは、の誰でもない、あんたよ!」

「壊そうとしてるのはおだろ!」

夫が歩詰め寄り、私の顔のに拳を突きしてきた。 激しい呼気が、臭く私の頬を打つ。

「たかが古いひとつじゃないか! 築の文の得にもならないボロだ! どうせあの老いぼれがんだら、相続税ばかりかかってお荷物になるだけのゴミだろ!? なんでそんなもののために、築いてきた族を壊す気だ! 俺たちの切な庭を、おが捨てるって言うのか!?」

たかが、古い。 老いぼれ。 ゴミ。

母が毎庭の入れをし、父の仏壇にをわせ、私と奈緒が遊びにけば「よく来たね」と笑って迎えてくれたあの所を、この男はゴミと呼んだ。

私ので、張り巡らされていた最の糸が、プツンと音をてて千切れた。

「……浩司さん」

私は真っ直ぐに、夫の狂気に満ちた目を睨み返した。

「壊したんじゃないわ。最初から、こんなものは『族』ですら――」

言葉を言い終えるより先だった。

トン、と。

静まり返った夜の玄関で、何かがに落ちる、さない音がした。

私たちは同に息を呑み、リビングのドアへと線を向けた。 ガラス窓の向こう。 暗い玄関の廊に、がっていた。

制のブレザー。 肩から滑り落ち、フローリングのに転がった、たそうなスクールバッグ。

そこにっていたのは、夜の塾の自習から戻ってきたはずの、歳の娘、奈緒だった。

真っな顔。 見かれた瞳は、リビングのに散らばったの細と、鬼のような形相の父親の姿を、信じられないものを見るように捉えていた。

「……お父さん?」

奈緒の震える声が、凍りついた空気を微かに震わせた。

玄関のたたきに落ちたスクールバッグから、教科の角が覗いていた。

暗い廊の突き当たり。 制のブレザーを着たままち尽くす娘の奈緒は、顔から完全に血の気を失っていた。

「……奈緒」

夫の声が、ずって裏返った。 さっきまで私を鳴りつけ、拳を振りげていた男とは到底えない、けない響きだった。

「お……自習にいたんじゃないのか? 今は半に迎えにくって……」

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