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"意識のない母の家を売る夫、その時病室のベルが鳴った" 第4話

野は淡々と、しかし刃物のように鋭い言葉を続けた。

「所者本が病気でけないという説でしたので、本契約に先ち、先週の曜に売買代の部――『付』として、本さんの個座へ500万円を信送しました」

ゴツン、とを鈍器で殴られたような衝撃だった。

付。 500万円。 先週の曜。

……母が、集治療で呼吸器をつけられ、の境をさまよっていた、あの曜。

夫は、私の隣で「丈夫だ、きっと助かる」と空々しい言葉を吐きながら―― 裏で母のを売りばし、500万円ものを自分の座に振り込ませていたのだ。

「……嘘でしょ?」

私は夫を振り返った。

夫は両をにし、見苦しく首を振っていた。

「ち、違うんだ、真紀! これは続きの話で、決して騙そうとしたわけじゃ……! お義母さんの将来の入院費を確保するために、付を預かっただけで……」

「預かった? 誰の許で!?」

私の叫び声に、ナースステーションの護師たちが息を呑んでちがった。 警備員を呼ぶべきか迷うような、張り詰めた空気が漂う。

だが、私は止まることができなかった。 全の毛穴から汗が噴きし、りと屈辱で体の芯がガタガタと震えていた。

「母は度もを売るなんて言っていません! 私も、娘も、何も聞いていない! 委任状なんてしません!」

私の叫びを聞いた瞬、野の目がスッと細くなった。

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温度のない、ビジネスの世界で修羅をくぐってきたの、氷のようにたいが宿る。

「……なるほど」

野は夫に向き直った。

「本さん。委任状は今に病でサインをもらう筈だと、先週私にそう説しましたね? 『義母の識ははっきりしており、売却には完全に同している』と。あれは全部、虚偽だったわけですか」

「い、いや! 識はあるんです、さっき目を覚ましたんです! ただ、遺症でちょっとが混乱してて……説得すれば絶対にサインはもらえますから! 、の朝まで待ってください!」

夫は野のスーツの袖縋りつこうとした。 みっともなく、見苦しく、必にをげる。

だが、野はそのを無慈に振り払った。

「もう結構です」

野はクリアファイルから、夫の署名と私印が押された『付領収証』の原本を引き抜いた。 そして、待のプラスチックの子の端に、パシィンと乾いた音をてて叩きつけた。

「所者の確な同も委任状もないまま、売却権限があると偽って付を受け取った。……これは民事の無権代理にとどまらず、らかな詐欺罪ですよ、本さん」

詐欺。 その文字が、夜の病棟の廊にく突き刺さった。

夫の膝がガクガクと震え、耐えきれなくなったようにそのに崩れ落ちた。

「付の500万円は、の正午までに私の指定座へ全額返してください」

野はたく言い放ち、トレンチコートを翻した。

「円でもがあれば、直ちに警察へ被害届を提します。それから……あなたが営業部を務める会社の本社コンプライアンス窓にも、この領収証の写しを添えて内容証を送らせてもらう。覚悟しておいてください」

革靴の音が、ざかっていく。 エレベーターの扉が閉まる子音が、静かに響いた。

廊に残されたのは、座のような格好でに両をつき、荒い呼吸を繰り返す夫と、 子のに放置された、枚の領収証。

【百万円也】

夫の乱れた跡と、鮮の印。 付は、週。

私は、連れ添った夫を見ろした。 涙は、議なほど滴もなかった。 ただ、胸の奥底で、何かが音をてて々に砕け散っていくのをじていた。

「……浩司さん」

私の乾いた声に、夫が恐る恐る、脂汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔をげた。

「その500万……どこにあるの?」

夫は何も答えず、ただ絶望に染まった目で、ガタガタと歯の根を鳴らすことしかできなかった。

「その500万……どこにあるの?」

私の声は、自分でも驚くほどく、平坦だった。

病棟の待。 プラスチックの子に散らばった領収証の写しをに、夫はにをついたまま、ぴくりともかない。 額から滴り落ちる脂汗が、病院のリノリウムのにさな染みを作っていた。

「……浩司さん。

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