"「母の十分は無駄」と笑った夫の失脚" 第15話
元夫の健は、会社から懲戒解雇にい形で放りされた、被害者への個な補償の支払いに追われ、今は昼夜を問わずアルバイトを掛け持ちしていると聞いた。 あんなに息子の世を誇らしげに語っていた義母の子も、所や親戚からのたい線に耐えかね、実のある方の片田舎へ引きこもるように引っ越していったという。
元のスマートフォンが、く震えた。
画面を見ると、見慣れない番号からのショートメッセージが件。 文面をく。
『お母さんの体調はどうだろうか。度、で直接会って、きちんとお詫びをさせてもらえないだろうか』
元夫からだった。
私は画面をじっと見つめた。 りも、憎しみも、復讐のすら湧いてこなかった。 ただ、通り過ぎた嵐の残骸を見るような、乾いたがあるだけだった。
私は母の老ホームに話をかけた。
「お母さん、健さんからメッセージが来たの。『度直接会って謝りたい』って言ってるけれど、どうする?」
受話器の向こうで、母はしの、静かに息を吸っていた。 そして、穏やかに言った。
「もう、会う必はありません、と伝えなさい」
「……分かった」
「謝罪の言葉を聞くために使うが、今の私には番もったいないもの」
私はさく笑って頷いた。 メッセージを削除し、着信拒否のリストに放り込んだ。
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これで、本当にすべてが終わった。
ひとつない青空の、老ホームの庭には、柔らかなの陽がり注いでいた。
ベンチののさな丸テーブルには、急須と湯呑み、そして私が朝から握ってきたお弁当箱が広げられている。 梅干しと鮭、母の好物のし甘めの卵焼き。
「美しいね、やっぱりお母さんの卵焼きは」
隣で真奈が、おにぎりを頬張りながら無邪気に笑った。 娘は々、仕事が休みのにこうして顔を見せてくれる。 父親のから解放された娘の笑顔は、以よりもずっとるく、柔らかくなっていた。
「由美、お茶をもう杯もらおうかしら」
子からベンチに移った母が、嬉しそうに湯呑みを差しした。 温かいお茶を注ぐと、よい湯気がふわりとちる。
母は庭の桜を見げながら、ふと私を振り返って微笑んだ。
「由美。今は急いで帰らなくてもいいのかい? パートのは丈夫なの?」
私は空を見げた。 透き通るような青空の向こうに、いがゆっくりと流れていく。
「丈夫よ。今はを取ったから」
私は母ののに、自分のをねた。
「急ぐ用事なんて、何もないわ。が暮れるまで、ずっとここにいるから」
母が目を細め、したように笑った。
かつて、私は母の顔をたった分見ることすら、夫の顔を伺い、許しを乞わなければならなかった。
あの頃の私は、結婚とはそういうものだとい込んでいた。 誰かがして、誰かが自分のを番ろに追いやるのが、平穏を守るための代償なのだと。
けれど、母は今、私のすぐ隣にいる。 お茶は温かく、太陽はまだい。
の針を気にする必なんて、どこにもない。
もう度と、私のきるを奪えるなど、この世界のどこにもいないのだから。