"母の友達" 第3話
探りですらなく、彼女の指先は正確にそのさな突起を押しげ、廊の灯りを消した。
「じゃあね、恵さん。また、ゴミのに来るから」
「ええ、ありがとう。気をつけてね」
玄関の引き戸がガラガラと音をてて閉まり、鍵が落ちる音が響いた。
私はすぐに母に向き直った。
「お母さん、あの、本当に誰なんだよ」
「だから、お友達の森さんよ。何度も同じことを聞かないで」
母は居に戻り、座卓のに散らばった父の遺品理の類を揃え始めた。背を向けている。
「どこでりったの。所の? 父さんのりい?」
「昔の……りいよ。たまたま連絡が取れてね。お父さんがくなってから、で細かったから、来てもらってるの」
「昔って、いつからだよ。僕、度もあんなに会ったことないよ。それに、猫のことだってそうだし、廊のスイッチの位置だってってた。昨今来たのきじゃないだろ」
母のが止まった。類の束を揃える指が、の端をく握りつぶしている。
「悠介。あなたは京で働いてるから、私のことなんて分からないでしょうけどね、父さんがいなくなって、このでで夜を迎えるのがどれだけ怖いか、あなたに分かる?」
「だから同居しようって言ったじゃないか」
「私はここをれたくないの。佳代さんは、私の話を聞いてくれるのよ。
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お父さんのことも、昔のことも……私を責めたりしないで、ただ聞いてくれるの」
「責めるって、誰が」
母は振り返り、私を睨みつけた。その目には、これまで見たこともないようない苛ちと、拒絶のがあった。
「あなたよ。さっきから尋問みたいに、あれこれ詮索して。誰と付きおうと、私の自由でしょう。もうなんだから、親の交友関係にをさないでちょうだい」
それ以、言葉を継ぐことはできなかった。 母は類を抱えて、階へとがっていった。階段を踏みしめるい音が消えたあとも、居には苦しい沈黙が淀んでいた。
認症の兆候とはえなかった。受け答えは極めて晰であり、の表もはっきりしている。だが、何かが決定に歪んでいた。 母は、あの森佳代という女を庇っている。いや、何かを暴かれることを恐れているようにも見えた。
計の針はを回っていた。 のはく、戸の隙から差し込むがから青いへと移り変わっていく。
私は居をて、コートを羽織るとへた。
乾いたが吹き抜けるを歩き、角を曲がったところにある平のにった。 表札には「林」とある。母と同代の林智子さんのだ。子どもの頃、母が体調を崩したときに夕飯をご馳になったり、回覧板を届けにったりした記憶がある。
父がくなったときも、典を持って真っ先に駆けつけてくれた所付きいのいだった。
チャイムを鳴らすと、しを置いて、割烹着を着た林さんがてきた。
「あら、悠介ちゃん? まあ、京から戻ってたの」
「ご無汰してます、林さん。これ、京の駅で買ったお菓子なんですけど、母の様子を見に来たついでで」
袋を差しすと、林さんは嬉しそうに目尻にしわを寄せ、「まあ気を遣わなくていいのに、がってお茶でもんでいかない?」と誘ってくれた。玄関先で分ですから、と断り、私は世話をに交わしたあと、本題を切りした。
「あの、林さん。ちょっとお聞きしたいことがあって」
「何かしら?」
「うちの母のところに、最よく入りしてる女のがいるんです。森さんっていう、代半ばくらいの」
「ああ、佳代さんのこと?」
林さんのから、あまりにもあっさりとその名がた。
私の胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
「……ごなんですか?」
「ってるも何も、懐かしいわよねえ。正彦さんがくなったって聞いて、戻ってきてくれたんでしょう? あの方、本当にマメで優しいだから。恵さんもいでしょうに」
「戻ってきたって……昔、所にんでたんですか?」
林さんは怪訝そうに眉を寄せ、私の顔をじっと見つめた。
「悠介ちゃん、何言ってるのよ。
覚えてないの?」
「え?」
「あなたが学の、の頃よ。恵さん、ひどい自律神経失調症でね、寝込んで起きがれない期がかったじゃない。