みかん小説
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"母の友達" 第1話

父が胃がんでくなってからヶが過ぎたの初め、私は勤め先の休暇をまとめて消化し、関の方都にある実へ戻った。

京から各駅を乗り継いで半。駅の寂れたロータリーからタクシーで分ほどった宅に、築になる造階建てのがある。父が、几帳面に入れをしていた庭はし伸び放題になっていたが、アルミサッシの引き戸をけた瞬にをつく、古い畳と防虫剤が混ざりった匂いは、子どもの頃と何も変わっていなかった。

「お母さん、悠介だけど。入るよ」

声をかけて玄関の式台に革靴を脱ぎ捨てたとき、最初の違にが止まった。

駄箱の横に、見慣れないエンジの婦用サンダルが揃えて置かれていた。母ののサイズはセンチのはずだが、そのサンダルはらかに回りきく、かかとの内側が擦り切れている。来客用のスリッパてを見ても、番のだけが毛羽ち、常に履き古された形跡があった。

母は暮らしのはずだった。法の際、親戚同が「京で同居したほうがいい」とを揃えたが、母自が「ここで父さんの荷物を片付けたいから」と頑なに断った経緯がある。誰かを泊めているのだろうか。

廊の奥から、トントンと包丁がまな板を叩くリズミカルな音が響いていた。

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汁の煮つ匂いも漂ってくる。

「お母さん?」

居を通り抜けて台所を覗き込んだ私は、息を呑んだ。

流しのにっていたのは、母ではなかった。 濃紺のエプロンをつけた、代半ばほどの柄な女性が、際よく根の皮を剥いていた。背は丸いが、腕のきには切の迷いがない。

私の気配に気づいたそのは、濡れたを腰のタオルで拭きながら、穏やかな笑みを浮かべて振り返った。

「あら、悠介さん。いらっしゃい。の、ちょうど良かったわね」

親戚でもない、所の顔見りでもない。 まったく見覚えのない顔だった。それなのに彼女は、まるで昨も私と言葉を交わしたかのような調で、自然に私の名を呼んだ。

「……あ、どうも。母は、どちらに?」

「恵さんなら、階でお父さんの本をダンボールに詰めてるわよ。もうすぐお昼にするからりてきてって呼んでくれる? お腹空いたでしょう」

彼女はそう言いながら、流しのにある戸棚から皿を取りした。 その所には以、父が使うい鍋が仕われていたはずだった。だが彼女がけた戸棚のには、普段使いの平皿が然と並び直されていた。母が守ってきたはずの台所の配置が、いつのにか別の論理でき換えられている。

階へがると、父の斎兼寝の畳のに、紐で縛られた文庫本や専が積みになっていた。

窓辺に置かれたスチールラックので、母が軍をはめて埃を払っていた。

「お母さん」

「ああ、悠介。着いたのね。かったじゃない」

母はちがり、膝を叩いた。父の葬儀のときはやつれ果てて歩くのも覚束ない様子だったが、顔は悪くない。頬の肉がし戻り、目元にも気があった。

「に、女のがいるけど……誰?」

声で尋ねると、母は瞬だけ線を泳がせ、すぐに何事もなかったかのように笑った。

「森さんよ。佳代さん。最、りってね。じゃいものも運べないし、伝ってもらってるのよ。とても親切な方でね」

「伝いって、シルバー材センターか何かの?」

「ううん、お友達よ。ほら、くりましょう。お昼作って待っててくれてるんだから」

母は私の追及を遮るように背を向け、階段をりていった。

卓には、根と鶏肉の煮物、ほうれんのえ、それに炊きたてのご飯と噌汁が並んでいた。がけのさなテーブルの配置も、父が座っていた座を避けるように、母と私が向かいい、佳代さんがお誕席に腰掛ける形になっていた。

「悠介さん、どうぞ。おにうといいんだけど」

佳代さんが差ししてきた噌汁の椀を見て、私はをとめた。 刻みネギが入っていなかった。母の噌汁の椀には、青ネギが散らされている。

「……あの、ネギ」

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