"鍵をかけた部屋で、誰かがシャワーを浴びている" 第6話
を止めた。 「え……? 朝ですか?」
「ほら、先週の曜だったかしら。朝のちょっと過ぎよ。ゴミしにたら、梨さんのお部から女のがてらしたから。きめのトートバッグを抱えてらしてね」
指先が急速にたくなっていくのをじた。 先週の曜。私はまさに、阪張に発したの朝だ。だが、私の幹線は京駅発で、部をたのは過ぎだった。
「その……どんなでしたか?」 私の声が震えていたのか、さんは怪訝そうに目を瞬かせた。
「ええと……背格好は梨さんと同じくらいかしら。髪がくて、栗に染めてらして、すごくじのいい方よ。私と目がったら、『梨の友の宮澤です、おはようございます』って、きちんとお辞儀してくださって……だからてっきり、泊まりに来てらしたのかと」
目のの景が、ぐにゃりと歪んだような気がした。
栗のショートヘア。 宮澤。 「梨の友の宮澤です」。
「さん……その、鍵をかけてていきましたか?」
「ええ、普通に。バッグから鍵をして、カチャッて閉めて、エレベーターに乗ってかれましたよ。……何かあったの?」
「いいえ……なんでも、ありません。教えてくださって、ありがとうございました」
どうやって自分の部までがったのか、記憶が定かではない。 エレベーターをり、〇号のドアのにつ。
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真しいディンプルキーの鍵穴が、ややかに私を見つめ返していた。
鍵をけて部に入る。 静まり返った玄関。靴箱のに、由佳が置いていった消臭スプレーがある。
ので、バラバラだったピースが急速に組みわさっていく。 張から戻ったときの、排の栗のい髪。 あの夜、折れ戸の向こうから聞こえた、穏やかで聞き慣れた声。
――今はどうしてこんなにく起きちゃったの? ――もう戻って寝なよ。すぐ終わるから。
あれは、の声ではなかった。 恐怖で歪んで聞こえていたけれど、あれは紛れもなく、聞き続けてきた由佳の声だったのだ。
なぜ気づかなかったのか。 あまりにもあり得ない状況だったから、脳がその能性を無識に排除していたのだ。誰よりも信頼している親友が、真夜に私の部へ忍び込み、シャワーを浴びているなどと、誰が像できるだろう。
さんが目撃したのは先週の曜。 私が張にる直、あるいはた直。 由佳は、私が留守にしていることをっていた。いや、それどころか、私が何に寝て何に起きるのかを完全に把握していた。
りよりも先に、激しい吐き気が込みげてきた。 私は震える指でスマートフォンを操作し、由佳の番号を呼びした。
コール音が回鳴り、いつものるい声が響いた。
「もしもし紗織? どうしたの、今部?」
その声を聞いた瞬、全の鳥肌が粟った。 「由佳。今、どこにいるの」
私の声音の異様さを察したのか、話の向こうが瞬、自然に沈黙した。 「……え? 職だけど。これから遅番の準備で」
「今すぐ、私の部に来て」
「え、でも仕事が……」
「来て。来ないなら、今すぐ警察にって、先週の曜の朝に私の部からてきた女のの話を全部する」
通話から、ヒュッと息を呑む音が聞こえた。 い、暴力なほどの沈黙が流れた。
やがて、先ほどまでのるさを完全に失った、く湿った声が返ってきた。
「……分でく」
話が切れた。 私は玄関のにち尽くしたまま、ののスマートフォンをく握りしめた。画面のガラスに爪がい込み、く変する。
分、インターホンがく鳴った。
ドアをけると、由佳がっていた。 トレンチコートの襟をて、うつむき加減に線を彷徨わせている。メイクは完璧だったが、唇のだけが異様にかった。
「入って」 く告げ、私はリビングへと戻った。
由佳は無言で靴を脱ぎ、揃えもせずに廊を歩いてきた。リビングの引き戸を閉め、ローテーブルを挟んで私と向かいう。彼女は度も私の目を見ようとしなかった。
「座って」 促すと、由佳は膝を揃えてカーペットのに正座した。その姿勢があまりにもさく、縮こまって見えた。
「さんに聞いた」 私はを押し殺し、平坦な声で切りした。