みかん小説
本棚

"鍵をかけた部屋で、誰かがシャワーを浴びている" 第5話

だって、鍵があるってことは、のがスペアを持ってたか、管理会社がずさんだったか、どっちかじゃない? 絶対に許せないよ、そんなの」

由佳は憤慨したようにテーブルをさく叩いた。そのり方は、完全に私の方のそれだった。

「ねえ紗織、今すぐ鍵を取り替えよう。私、りいに鍵の交換やってる業者さんがいるか聞いてあげる。それに、あの部にで戻るの、怖いでしょ? 私も緒にくから」

彼女の申しは、恐怖にすくむ私にとって救いそのものだった。 そののうちに、由佳が配してくれた鍵業者がマンションに来てくれた。ピッキングにいディンプルキーへのシリンダー交換。事費込みで万円い費だったが、背に腹は代えられない。

作業を見守る、由佳は部の換気をしてくれたり、散らかった寝を片付けてくれたりした。

「紗織、今からどうするの? まだホテル?」 作業が終わり、業者を見送ったあと、由佳が玄関で靴を履きながら尋ねてきた。

「まではホテルにいようとう。まだ、あの部でお呂に入る勇気がなくて……でも、仕事の資料を取りに、の昼回戻らなきゃいけないの」

「そっか……じゃあさ」 由佳はバッグをごそごそと探り、予備のキーリングを取りした。

「しい鍵、本あるんでしょ? 本、私が預かっておこうか?」

広告

私はを止めた。由佳は屈託のない笑顔で私を見げている。

「ほら、紗織がホテルにいる、郵便物が溜まってると留守だってバレちゃうし、観葉植物のやりも気になるでしょ? 私、職のサロンからここ、で本だしさ。何かあったら仕事帰りに様子見に来てあげるよ」

夜の恐怖が、瞬だけ脳裏をかすめた。 だが、目のにいるのは、わざわざ休みのの午を潰して駆けつけ、鍵の配までしてくれた親友だ。彼女を疑う理由がどこにあるだろう。

「……ありがとう。助かる」

私はしく渡された本のディンプルキーのうち、本をリングからして由佳の掌に落とした。属のたい触が、彼女のく入れされた指先に収まる。

「任せて。絶対に紗織の部は私が守るから」 由佳は頼もしそうに微笑み、鍵を丁寧にポーチの奥へと仕い込んだ。

そのあと、彼女は「ついでに洗面所の掃除、伝うよ」と言って、洗面所へ入っていった。 私はリビングで仕事の類をまとめていたが、洗面所から響く音にふとを止めた。

ガラガラ、とい引きしを引く音。 続いて、配管の奥のほうを弄るような、カサカサとした擦れ音が聞こえた。

洗面台のには、観音きの扉のほかに、最段に細い引きしがついている。配管のメンテナンス用のスペースを兼ねた所で、私は入居してから度もそこを使ったことがなかった。

パイプのサビや湿気が気になって、物を入れる気にならなかったのだ。

「由佳? 雑巾なら、洗濯のの棚にあるよ」 リビングから声をかけると、洗面所から「あ、うん! わかった!」としずった返事が返ってきた。

見にくと、由佳はすでに引きしを閉め、洗濯のから雑巾を取ってを拭いていた。 「、入りにアルコール消毒しといたからね。これでしは気持ち悪くないでしょ」 ちがった彼女の額には、うっすらと汗が滲んでいた。

そのは夕方に由佳と別れ、私は再びホテルの部へと戻った。 鍵をしくし、信頼できる友に留守を頼んだことで、夜ほどの息苦しさは消えていた。、もう晩ホテルに泊まれば、には自宅へ戻れるだろう。そうっていた。

歯が決定に狂い始めたのは、翌の夕方のことだった。

会社からの帰り、着替えを取りに度マンションへち寄った。 エントランスを抜け、階のゴミ集積所のを通りかかったとき、ちょうど燃えるゴミの袋をしに来ていた隣の、良子さんと鉢わせた。代半ばの、所付きいにな主婦だった。

「あ、梨さん。こんにちは」 「こんにちは、いつもお世話になってます」

挨拶をして通り過ぎようとした私の背に、さんが「あのね」と控えめに声をかけてきた。

「梨さん、最お忙しいの? 朝によくおかけになってるみたいだけど」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: