"末席の男が放った三百億の通告" 第21話
苗が静かにお茶を配膳して退する。
古川部が、苦しい沈黙を破ってをいた。
「まず……本付で頂戴いたしました解約通、ならびに理由、確かに拝読いたしました。私どもが本、真っ先に確認させていただきたいのは……理由に添付されております名刺の写しが、私どもの本経営企画部に所属する、久次のもので相違ないか、という点に尽きます」
「相違ありません」
俺は淀みなく答えた。
「裏面のきの文字も、彼女本が、私の目のでボールペンをらせていたものです。百が集まったの同窓会の席で、同じ円卓を囲んでいた名ほどの同級が見届けの位置におりました」
古川部の顔から、さっと血の気が引いていくのが見えた。
「……同窓会、でございますか」
「はい。久次と私は、の同級です」
隣で杉支が息を呑む音が聞こえた。古川部の指先が、膝ので刻みに震えている。
「その……久次は、久取のご令嬢でいらっしゃいます」
「っています。の頃から、父親の肩きをよくにする物でしたから」
古川部は両を固く組み、声を絞りすように言った。
「堀社……改めて、事実関係の確認をさせてください。久次は、その席において、御社との取引について、どのような発言を及んだのでしょうか」
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「『そんな態度ならパパに頼んで取引打ち切る』と。そして『余裕でしょ、パパに頼んで取引打ち切ってもらう』と。理由に記載した文言の通りです」
古川部は、ぎゅっと目を閉じた。わずか秒の空。再び目をけたとき、その瞳にはエリートバンカーとしての諦と、徹な現実を受け止めたが宿っていた。
「……承いたしました。至急、本へ持ち帰り、取および役員会に報告いたします」
「堀社!」
杉支が、たまらずを乗りしてきた。
「私からも、言だけ……! 百億円の資流は、私どもの京支にとりましては、支のに関わる……」
「杉支」
横から柴田が、ややかな声で遮った。
「数字のみは、そちらも々ご承のはずです。社員千百名の与振込、仕入れ決済、貨取引、グループ社の座……すべて、既定の方針に従い、順次へ移いたします。理由は、理由に記した通りでございます」
杉支は言葉を失い、項垂れた。古川部が、隣の杉支の膝にそっとを置き、静かに制した。
「……堀社」
古川部が、再び俺を真っ向から見据えてきた。
「つだけ、実務の側のこととして伺ってもよろしいでしょうか。これは利や数料といった条件の交渉ではございません。条件で覆るようなお話ではないことは、理由を拝読して痛いほど理解いたしました。
……社は、久取個に対して、何か私なご遺がおありなのでしょうか」
「取個への遺など、毛ありません」
俺は古川部の言葉を遮るように、はっきりと告げた。
「理由の本文から取の名をしたのは、く必がないからです。私が問題しているのは、本経営企画部という枢に籍を置く次が、私な酒の席で自の名刺を弄び、あまつさえ取引先に対して取引の止を公然とにしたという、その点です」
古川部は無言のまま、微だにせず俺の言葉を聞いている。
「取の娘であるという事実は、彼女がその傲な発言をにできた背景に過ぎません。取ご自が何かを指示したわけではないことくらい、理解しています。……が社は、王という組織の信用を信じて、百億円という資を預託してきました。その根幹たる信用に、決定な疑義がじた。疑義のじた融関から資を引き揚げ、健全に分散させるのは、経営者として至極当然の義務です。……古川部、あなたがこの、が社のために誠誠尽くしてくださったことと、この決断は、完全に別の次元の話です」
「……はい」
古川部はく息を吐き、静かにをげた。
「今の実務の窓は、これまで通り柴田部でよろしいでしょうか」
「ええ、すべて柴田に任してあります」
「承いたしました。……貴なおをいただき、より謝申しげます」