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"末席の男が放った三百億の通告" 第19話

苗は理由を詮索することなく、「かしこまりました」と静かにをげた。

午分。

社のドアがノックされ、苗が静かに姿を現した。

「社。王京支、ご担当の員様よりお話が入っております。『至急、社にお取り次ぎ願いたい』とのことですが」

これが、記すべき件目だった。

「ない。『理由は面の通りです』とだけ伝えてくれ」

「かしこまりました」

苗はドアを静かに閉めた。元の記録用に、サラサラと万をらせる音が廊に微かに響いた。

件目は担当員。件目はその直属の課。

そして件目にかかってきたのは、京支の杉からだった。

杉支は社だけでなく、財務部の柴田のデスクへも直接内線を入れてきた。に柴田が報告してくれたところによれば、杉支は受話器の向こうで激しく揺していたという。

『柴田部! 何かの入力ミスではありませんか!? 百億円の定期預途解約など、私どもの支では過に度も例がございません!』

柴田は眉つかさず、こう返答したという。

『入力の誤りではございません。理由は、すでにお送りした面の通りでございます』

『しょ、面は拝見いたしました! しかし……理由にかれている、本経営企画部のの名というのは……これは本当に、事実確認が取れているお話なのでしょうか!?』

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『事実のみを客観に記載しております。事実関係の確認につきましては、そちらの内でおめください』

柴田はそれだけを告げ、静かに受話器を置いた。

社へ報告に来た柴田は、淡々とした表で腕計を見つめた。

「杉支は、まだ『何かの違いであってほしい』と祈っている段階ですね。……ですが、これで話は本法営業部の古川部の元へとがります」

古川法営業部。

あさぎホールディングスの担当責任者をにわたって務めている、歳のエリートバンカーだ。に回は定期に京本社を訪れ、極めて誠実で緻密な仕事ぶりを見せていた男だった。

「古川さんは、本当に優秀で、真面目な方です」

柴田が静かに言った。

「だからこそ……今回の件で、最も胃を痛めることになるはずです」

午。

苗が、胸のさに枚の記録用を抱えて入してきた。

「社、件に達しました」

用には、几帳面な文字で件の着信記録がびっしりとき込まれていた。内訳は、京支から件、本法営業部から件、本の別部署から件、そして杉支の公用携帯から直接の着信が件。

「すべて、『度直接お会いして、理由の真をご説いただきたい』という用件です」

「理由はもう伝えてある。同じ対応を続けてくれ」

「承いたしました」

正午。

苗が、仕し弁当のお茶とともに、枚目に入った記録用を運んできた。

「件を超えました。法営業部の古川様ご自から、すでに度のお話が入っております。それから……本のコンプライアンス統括部からも連絡がございました」

「コンプライアンス?」

「はい。宮信子様とおっしゃる責任者の方です。『理由に添付されている名刺の写しについて、原本の確認をいたい』とのことでした」

「原本は俺が持っている。必であればいつでも見せるが、話で見せられるものではないと伝えてくれ」

「かしこまりました」

苗は頷いたが、すぐには退しなかった。資料の特定のをじっと見つめている。

「……社。古川部の度目のお話の際、らかに声のトーンが変わっておられました」

「どう変わっていた?」

「度目と度目は、揺しながらも入力ミスを疑っておられる様子でしたが……度目は、名刺の写しの跡と肩きを確認された直だったようで、完全に絶句しておられました。『至急、本へ持ち帰って対応を協議する』と……それから、こうも仰っておりました。『あさぎ様からの与振込千百名分、次の仕入れ決済、貨為替取引、そしてグループ社の全座……これらすべてがくということで、相違ないのですね』と」

古川部は、すべての数字を完璧に把握していた。

担当責任者として、あさぎホールディングスの座のきを誰よりも熟していたからこそ、その数字の背にある数料収入の消失と、自が失う信用の巨さに戦慄したのだ。

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