"末席の男が放った三百億の通告" 第17話
俺は帳をき、挟んであった久エリの名刺を抜き取ると、裏面をにして会議用テーブルのど真んにことりと置いた。
「私な酒の席で、公然と取引先を威圧し、利の便宜や社の融資報を漏洩させた。実際に介の次に取引を止する権限がないことなど、百も承だ。だが――そのような発言が経営企画部の幹部から平然とびすような融関に、グループの血税である百億円もの資を集させておくことは、経営者として断じて許容できない。理由は、それだけだ」
柴田が静かにを伸ばし、テーブル央の名刺を指先でつまみげた。
表面の肩きを確かめ、裏返してきの丸文字を凝した瞬、柴田の呼吸がピタリと止まった。
「……本経営企画部の次。取のご令嬢ですね。社のの同級でもある」
柴田は名刺をテーブルに戻した。その作は、極めて慎だった。
「社、これは、いつの来事ですか?」
「昨夜の同窓会だ」
俺は、昨夜の円卓で起きた来事を、を交えずに事実のみをく説した。
パパに頼んで取引を打ち切ると脅されたこと。名刺の裏に『げに来るパパに通しとく』とかれて突きされたこと。父親に取引止のLINEを送ったと画面をちらつかせて脅迫されたこと。社の借入報を酒の肴にされたこと。
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すべてを聞き終えた井が、腕を組んだまま、く言だけ呟いた。
「……承だ」
スピーカーフォンの向こう側からも、々しいつの「異議なし」という声が続いた。
柴田は元の資料の端を几帳面に揃えながら、静かに語り始めた。
「社。資の分散につきましては、私自、に入社して以来、毎申しげてまいりました」
「分かっている」
「王さん港に百億円もの巨額資を集させておくことは、預保険の観点からも、リスクマネジメントの観点からも、極めて危険な状態でした。毎具申させていただき、その都度、社に却されてきました」
「ああ。、俺が断り続けてきた」
柴田は資料に線を落としたまま、静かに言葉を継いだ。
「その理由につきましては、これまで度もお尋ねしませんでしたし、今も伺いません。ただ……つだけ申しげます」
柴田は元のペンを置いた。
「が社あさぎホールディングスは、王さんにとって、全法座ので最の預残を誇るトップ顧客です。番の私鉄系企業の、実に倍以の預託残をしております。その事実は、当然ごですね?」
「っている」
「もうつ。先、王さんの本経営企画部から、が社の財務部宛てに通のな提案が届いております。『グループ決済集約に関するご提案』というタイトルのものです。
が社がに分散させているわずかな決済座も含め、すべての取引を王へ本化してほしいという、極めてのめりな提案でした」
俺は柴田の顔を見た。柴田もまた、テーブルのの名刺に線を落としている。
「提案の起案者の欄には、本経営企画部・次久エリの名が記されておりました。が社の担当者が受け取り、私のデスクで検討を保留していた案件です。まだ、正式な回答はしておりません」
皮肉な話だった。
自ら「決済をすべてうちに集約してくれ」という提案を起案していた当の本が、その宛先である企業のトップに対し、同窓会の酒の席で「パパに頼んで取引を打ち切る」と嘲笑したのだ。
俺は名刺を見つめ、静かに息を吐いた。
「柴田、実務の段取りを説してくれ」
柴田は鏡を押しげ、元の程表をめくった。
「定期の億円につきましては、本午付で途解約の申し入れをいます。普通預の億円は、移先となるつのメガバンクの座を確認の、来週に全額を順次送いたします。決済座の百億円につきましては、取引先各社への振込指定座の変更続きを伴いますので、来週曜より順次案内状を送付し、ヶをかけて完全に移を完させます」
柴田の淀みのない説が続く。
「期運用の億円は、満期が到来したものから順次解約し、の運用商品へ組み替えます。