"末席の男が放った三百億の通告" 第2話
町のれにある古い寺の墓に、母の墓がある。若くして逝った父の遺骨も、同じたい墓のに眠っている。
京から幹線に揺られること半。昼過ぎに改札を抜け、照りつける陽射しので線を買い、墓の苔をで丁寧に洗い流してをわせる。いつものなら、駅の売で母の好きだった銘菓を買い、そのの最終便を待たずに京へと引き返すのが恒例だった。
だが、このの盆だけは、夜に予定が入っていた。の同窓会だった。
卒業から数えて。幹事を務める松本から、京の自宅に往復ハガキが届いたのはの終わりのことだった。松本は代に徒会を務めていた男で、卒業百以の現所を、実の親やの伝をつずつ辿って確かめるような、臭いを切惜しまない実直な男だった。
会は駅のグランドホテル、階の宴会。席の見込みは百。几帳面な楷で印刷されたハガキの通信欄の余に、松本の直で、ぽつりと言だけき添えられていた。
『田も来る。おが来ないと、あいつがになる』
田貞子。
その文字の墨痕を目にした瞬、俺の胸の奥底で、もの固く蓋をされていた記憶の抽斗が音をてていた。俺は元のペンを取り、ほとんど躊躇することなく【席】の文字に迷いのない丸をつけた。
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丸をつけてから、俺はハガキの余の文字をもう度なぞるように読んだ。
『あいつがになる』
松本という男は、の埃っぽい教ので、誰と誰が世界の同じ側にっていたのかを、今でも正確に覚えている男だった。
グランドホテルの回転ドアをくぐると、の気とともに、ざわざわとしたのざわめきが朶を打った。宴会へと続く階の廊にはい机が置かれ、受付が設えられていた。机のには分い名簿が冊かれている。
受付の脇にっていた柄な男が、通を歩いてくる俺の姿を認めるなり、ぱっと顔を輝かせてきくを振った。
「弘! 本当によく来たな!」
松本だった。代よりも腹回りは回り以太り、スーツのボタンが窮屈そうに見えたが、顔の央にある太くまっすぐな眉と、を真っ向から見据える澄んだ瞳は、昔の徒会のときのままだ。
「ハガキに脅迫めいたことがいてあったからな。来ないとになるって」
「いたよ。……聞いたか?」
松本が元を綻ばせ、声を潜めて尋ねてくる。俺もさく息を漏らして笑った。
「ああ、聞いた。あいつが来るなら、顔をさないわけにはいかないだろ」
「よし」と松本は満そうに頷き、机のからいプラスチックの名札ケースと全ピンを取りした。
名札の氏名のには、あらかじめ横線が引かれ、さな空欄が設けられている。
「職業欄だ。俺のいつきなんだけどな。経って、みんなが今どんな飯のい方をしてるのか、名札を見れば目でわかるようにしたくてよ」
松本から渡された油性のボールペンを握り、俺は数秒だけ線を落とした。そして、丁寧でも乱雑でもない文字で、その空欄にくき込んだ。
『会社経営』
それ以は、何もかなかった。会社の名も、グループの規模も、代表取締役という肩きすらも記さない。
松本は名札を覗き込み、眉をわずかにかして「ふうん」とく喉を鳴らした。
「経営か。何の会社やってんだ?」
名簿の俺のの名に赤いペンで丸をつけながら、松本が何気ない調子で尋ねてくる。
「運送とか、倉庫とかだな。荷物のし入れの請けみたいなもんだよ」
「トラックか。おらしいな」
松本はそれだけで完全に納得したように笑った。の頃、俺が授業を終えてから夜遅くまで運送会社の倉庫で仕分けのバイトをしていたことを、松本はよくっていたからだ。俺もそれ以、余計な言葉を継ぎすことはしなかった。
受付を抜け、な宴会の防音扉を押しける。
界が気にけた。磨きげられた巨な空には、純のテーブルクロスを掛けられた丸い宴会卓が卓、然と並んでいた。
つの卓に脚の子。