みかん小説
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"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第16話

昨夜、阪の張先で私の部に法侵入し、現、阪府警の曽根崎署から警庁へストーカー事案として緊急配が回っている被疑者です。藤原健司という男です」

受話器の向こうで、警備員が息を呑む音がはっきりと聞こえた。

「……えっ、配の……!?」

「絶対にゲートのへ入れないでください。ビルの正面玄関の内側、インターホン越し、あるいは受付カウンター越しにそのに留め置き、今すぐ田署へ〇番通報してください。すでに曽根崎署から田署の活全課へ事案番号が共されているはずです。今すぐです」

「わ、分かりました! すぐに通報します!」

通話を切ると同に、私はちがった。

フロアの奥の役員から、ちょうど総務部の本が戻ってきたところだった。私はで本の元へ歩み寄り、簡潔に告げた。

「本部、来ました。階のロビーに藤原がいます」

本の顔から血の気が引いた。

「へくのかね?」

「ではきません。総務の方と、ビルの警備責任者の方にち会っていただきます。絶対にフラッパーゲートのにはません。……ですが、私が顔をさなければ、男は何わぬ顔でロビーに居座り、警察が来るにちってしまうかもしれません」

「危険すぎる、宮本君」

「丈夫です」私はコートのポケットにスマートフォンをねじ込んだ。

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「相が番嫌がるのは、自分が『理性で善良な夫』として振るえなくなることです。周囲に衆目があり、警備がいて、警察官が駆けつける公のこそ、あいつの仮面を剥ぎ取る唯の所です」

本は唇を引き結び、く頷いた。

「分かった。総務課の川も呼ぶ。私と川、それから防災センターの統括責任者を連れてりよう。絶対にゲートのにはるなよ」

エレベーターが階から階へとしていく。

真鍮のすりを握りながら、私はく息を吸い、吐きした。指先の震えはまだ完全には止まっていなかったが、界の歪みは消えていた。、真のを引いて夜のを逃げたときの、あのたいの触が指先に蘇る。あのとき、私たちは逃げることしからなかった。だが、逃げるだけでは、この男の支配の円環からは永にられないのだ。

ピン、とい子音が鳴り、階ロビーの扉がいた。

岸通りのオフィスに面したロジスティクスの本社ロビーは、を基調としたい吹き抜け構造になっている。ガラス張りの正面玄関から差し込む午のが、磨きげられた理のにく反射していた。

エレベーターホールからゲートへ向かう通を、本部と警備責任者の柄な男性に挟まれるようにしてんだ。

自改札のようなセキュリティゲートの向こう。

来客用の受付カウンターのに、その男はっていた。

写真で見た通りの姿だった。

仕てのいい濃紺のビジネススーツのに、仕てのしっかりしたダークグレーのステンカラーコートを羽織っている。く刈り込まれた清潔のある黒髪。な印象を与えるハーフリムの鏡。には、都内の名百貨のロゴが入った袋を提げていた。

暴徒の気配など微もなかった。

どこからどう見ても、取引先へ挨拶回りに訪れた、礼儀正しい企業の課クラスの男性にしか見えなかった。

男は私たちがエレベーターホールからてきたのに気づくと、すっと背筋を伸ばし、会釈するようにわずかにをげた。鏡の奥の細い目が、穏やかに細められる。

「理さん」

ゲートの化ガラス越しに、男がをいた。

その声は、昼がりのオフィスビルに溶け込むほど柔らかく、よく通るバリトンだった。

「急に押しかけてしまって、申し訳ありません。受付の方にお願いして、お取り次ぎいただきました。……阪では変なご迷惑をおかけしたと、ずっと胸を痛めておりましてね。どうしても直接お目にかかって、お詫びがしたかったのです」

男はに持った百貨の袋をし持ちげてみせた。

「皆さまで召しがっていただけるお菓子をお持ちしました。ほんの気持ちですが」

そのにいた警備責任者が眉をひそめ、本部が私のに半歩体を滑り込ませた。

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