"午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた" 第11話
隣の席に座るビジネスマンが聞をめくる音、内販売のワゴンの輪が軋む音、乗客が通を歩く靴音――そのすべてが、ハーフリムの鏡をかけたあの男の音に聞こえて仕方がなかった。
京都を過ぎ、名古を過ぎても、私のの震えは止まらなかった。
スマートフォンを握りしめ、画面を何度も更した。阪府警の担当刑事からは、あの話がホテルから百メートルほどれた国沿いの公衆話ボックスから発信されていたこと、すでに鑑識が受話器の指紋採取に向かったこと、しかし現に男の姿はすでになかったことがショートメッセージで報告されていた。
男は、京へ向かっている。
私が午番の幹線に乗るとい込んでいるのなら、彼は今頃、続の列に乗っているのか、あるいはすでに別の段で京へ向かっているのか。
横浜を過ぎたあたりで、ようやく息が吸えるようになった。
だが、それはからではなかった。自分の活の根拠である京そのものが、もはや全なシェルターではないという厳な事実に気づいたからだった。
品川駅で幹線をり、そのままタクシーにび乗って、港区岸にあるロジスティクスの本社ビルへ向かった。
自宅のアパートへ帰るという選択肢は、真っ先に消された。
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もし藤原が私の張程をあれほど正確に把握していたのなら、私の現所が割れていないという保証はどこにもない。世田のワンルームマンションの郵便受け、オートロックの隙、ゴミ集積――あの男の執さをえば、私の活圏などとっくに暴かれている能性がかった。
午分。オフィスフロアに入ると、いつものキーボードの打鍵音と、話の保留音、複の作音が私を包み込んだ。
「あれ、宮本さん? 阪から直帰じゃなかったんですか?」
デスクの島から顔をげたのは、輸業務のチームリーダーをしている佐伯だった。
私は自分のデスクの子に崩れ込むように腰をろし、震えるでパソコンの源を入れた。
「……し、予定を切りげて戻りました。佐伯さん、総務の部はいらっしゃいますか」
「え? 本部なら、役員フロアの会議にいるとうけど……どうしたの、顔が真っ青だよ」
私はちがり、佐伯の肩にを置いた。
「佐伯さん。今から話すことを、絶対に冗談だとわないでください」
社内の応接ブースを急遽押さえ、総務部の本と、直属の司である業務課を呼びした。
私は阪のホテルで起きたことのすべてを話した。夜の鍵発、部への法侵入、洗面台の鏡ケース、防犯カメラに残された藤原の姿、そして今朝の脅迫めいた話。
机のに、曽根崎署から発された被害届の受理番号がかれたカードを置いた。
初めは半信半疑の表を浮かべていた本部の顔が、話がむにつれて見る見るうちに青ざめていった。
「……あの、野さんの元旦か」
本がい声で呟いた。、真が突然の退職届をし、藤原が受付に現れて何も居座った件を、総務部である彼も当然記憶していた。
「警察には、京の警庁にも連絡がっているのかね」
「曽根崎署から、私の居を管轄する世田署と、この本社がある田署へ、ストーカー事案としての報提供と連携請を今にすと言われました」
私はのめりになって訴えた。
「お願いです。今から、オフィスの受付と代表話の対応を完全に厳格化してください。私宛ての話であっても、族や親戚を名乗る物からの取り次ぎは切拒否してください。私のスケジュール、籍状況、携帯話の番号、そして自宅の所に関する問いわせには、相が誰であれ『社秘のため回答できない』と突っぱねていただきたいんです」
「当然だ」本は脂汗を拭いながら頷いた。「受付の警備員にも顔写真を共しよう。幸い、うちは階のエントランスゲートで社員証のタッチが必だから、部者が勝に執務フロアへがってくることはできない。
……だが宮本君、自宅の方は丈夫なのかね」