みかん小説
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"妻は毎晩八時、私を家から追い出す" 第25話

画面が点灯する。

美智子からだった。 婚届を預かってからヶ、度も連絡は取っていなかった。

『お疲れ様です。類の準備がいました。今週の曜、午に品川区役所の戸籍課で落ちえませんか。婚届を提したいといます』

い、事務な文面だった。 妹のマンションのくでアパートを借り、スーパーのパートを続けながら、美智子はしい活を軌に乗せたのだと、の噂で聞いていた。

私は画面を見つめ、親指をかした。

『わかりました。曜のに、戸籍課ので』

送信ボタンを押すと、画面はすぐに暗転した。 指先は震えていなかった。 胸の奥に広がったのは、底れぬ静寂と、え切った納得だけだった。

計の針が、音をててむ。 分。 分。

そして、ちょうどを告げる、部の置計の子音がピピッ、ピピッと鳴り響いた。

体が、条件反射のようにいた。 の習慣、そしてあの狂気のような週の記憶が、私の骨の髄に染み付いていた。

私は反射にちがり、狭い玄関のがり框へと向かった。 壁のフックにを伸ばし、掛けてあったのジャンパーをに取る。 靴を履き、へようとして——

ふと、が止まった。

には、私の履き古したスニーカーがあるだけだった。

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シンクの方を振り返る。 そこには、え切ったステンレスの流し台があるだけで、布巾を絞る女の姿はない。

『になったら、にて』

そうたく言い放つ声は、どこにもなかった。 畳の部には、の通過音と、換気扇のい唸り声が漂っているだけだ。

誰も、私を追いしはしない。 ここは私の部であり、私だけの所だ。 誰に慮する必も、誰の目を気にしてを潰す必もない。

私はジャンパーを握りしめたまま、玄関先でち尽くした。

追いされていたのではなかったのだ。 私はあの週、美智子に追いされることで、自分の罪から目を逸らすための『被害者の』を与えてもらっていたのだ。 妻に理尽な扱いを受けるれな夫。 その役を演じているだけは、自分が、誰かのを破滅させた加害者であることを忘れられたから。

私はゆっくりと、ジャンパーを壁のフックに戻した。 靴を脱ぎ、部の央のローテーブルのへと戻る。

座布団のに、で腰をろした。 誰もいない部。 を過ぎても、を過ぎても、私を待つも、私を拒絶するもいない。

私は湯呑みを取り、めた麦茶をんだ。 喉を通るたさが、体の隅々にまで染み渡っていく。

もう、誰のせいにもできない。 自分のさも、過の汚辱も、これから迎える孤独な老も。

すべては私が選び、私が引き受けるべき、私自のだ。

分。 くで踏切の警報が鳴り始め、やがて夜のを切り裂くように、りがりっていった。 私は、静まり返った部のかりので、背筋を伸ばして座り続けていた。

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