"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第34話
元義母が駅までで送ってくれ、莉子だけが階段を駆けがってきたのだ。
莉子は照れくさそうにさな袋を私に差しし、リビングの隅のクッションにちょこんと腰をろした。私が袋をける、莉子は恥ずかしそうにそっぽを向いていた。
袋のから現れたのは、作りのメッセージカードと、本の赤い折りのカーネーションだった。
かつて、あのの台所の壁に貼られていたものと、まったく同じ赤い折り。
カードをくと、鉛で丁寧にかれた文字が並んでいた。
『血が繋がっていなくても、私のお母さんはずっとお母さんです』
壁に貼られていた『お母さんへ』という文字と、寸分違わぬおしい跡だった。
私の目から、止めどなく涙が溢れした。
莉子は線を泳がせながら、私が涙を拭うのをじっと待ってくれていた。
「……まあ、俺たちもいるけどな!」
台所から公平が顔をし、照れ隠しのように声を張りげた。がその隣で豪に笑い、莉子もつられて声をげて笑った。
で、所のケーキで買ってきた母ののイチゴショートケーキを切り分けた。莉子が番きなイチゴの乗ったピースを真っ先に奪い取り、公平が「おい、ずるいぞ!」と笑い声をげた。
その頃、元夫は仕事から帰宅し、散らかり放題になった誰もいないえ切ったリビングに、でち尽くしているはずだ。
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積みにされた洗濯物と、学から届いた未処理のプリントの。
莉子がややかに告げる。
「お父さん、のお弁当、いるからね」
元夫はネクタイを緩め、ため息をつきながらで台所にち、器用なつきで米を研ぐ。その研ぎ方は、莉子から教わったのだという。
「わかったよ……」
元夫は、そう答えるしかないのだ。
倫相の野島マキもいない。妻だった私もいない。頼りにしていた息子たちもいない。実の母親である義母も、息子の事の世話は切してくれない。
あのに残されたのは、かつてこの男が度として向きおうとしなかった、「庭」という名のたい現実そのものだった。
私がにわたってで背負い続けてきた々の営みだけが、あの男の肩のに、逃れられない責任としてくのしかかっている。
それは復讐や罰などではない。
のとして、の父親として、背負うべき当たりの仕事なのだ。
窓のから、初の柔らかなが吹き込んできた。
私はこれからも、どれほどむ所がれていようとも、あの子がを向いてきていけるよう、世界で番の方であり続けようとっている。
卓を囲む子供たちの屈託のない笑い声を聴きながら、私はケーキのの甘いクリームを、静かにへと運んだ。