"娘を押し付けた夫、九年目の誤算" 第33話
元夫に対する慰謝料百万円は、その分与額から全額相殺された。
倫相の野島マキに対しては、向井弁護士を通じて内容証郵便を送付し、百万円の慰謝料を括ではなく毎万円の回分割払いで支払わせる公正証を締結させた。
と公平の養育費は、毎わせて万円。支払いがでも滞れば直ちに与を差し押さえる執認諾文言を付けた公正証を作成した。
元夫は、私との婚が成した暁には、野島マキとでしい活を始める青写真を描いていたらしかった。
ところが、莉子がそのまま元夫の元に残るとるや否や、野島マキは掌を返したように態度を変させたという。
「今さら子育てなんて絶対に無理! 今までゆきさんがやってたんだから、あんたがで面倒見なさいよ!」
そう言い放ち、に入る頃には元夫のから完全に姿を消したそうだ。残されたのは、毎私の座へ振り込まれる万円の慰謝料の送記録と、野島マキという名だけだった。
元夫は現、朝の支度も、弁当作りも、洗濯も、学からの配布物の確認も、すべてまれて初めてでこなしている。
週末に莉子と会うたび、その悪戦苦闘の様子が伝えられてきた。
元義母は、莉子の学の送り迎えや唱団の付き添い、靴やの買い替えなどは積極に引き受けてくれているという。
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だが、元夫のための事は切を貸していないそうだ。
「あんたの世話なんて切しないわよ。あんたは歳の分別あるでしょ。自分の尻は自分で拭きなさい」
莉子が、元義母の真似をしながら笑って教えてくれた。
、元義母が駅の向こうの私のアパートを突然訪ねてきた。
部にはがろうとせず、玄関のがり框にったまま、両でバッグを握りしめて々とをげた。
「許してほしいとは言わないわ。ただ……今まであなたを責めててきたこと、本当に申し訳なかったと、それだけは謝らせてちょうだい」
のよりも、遥かにく、い礼だった。
「……莉子は、元気にやってるわよ」
元義母のから、初めて「莉子」という呼び捨ての言葉が発せられたのを、私はにした。
「莉子を守ってくださっていることには、から謝しています」
私がそう答えると、元義母はさく頷き、静かに帰ってった。
ドアが閉まった、奥の部から顔をしたが、ぽつりと呟いた。
「……ばあちゃん、ずいぶん痩せたな」
私は返事をしなかった。
には元夫から「たまには父親の顔を見に来い」と連絡があったそうだが、は「母さんを度も泣かせた父親に、今まで通り会えるとってるの?」とだけ返信して拒絶したという。公平も「莉子のことをちゃんと事にしてくれなきゃ、絶対に許さないから」
とだけ返したそうだ。
私はから、スーパー惣菜部の契約社員へと昇格した。
杉本さんの次の推薦枠としてから打診されていた話が、も倒しで実現したのだ。取りは願だった万円を超えた。
の卓での決着を報告した、杉本さんは「ほらね、集めてきた記録を叩きつけるが来たでしょ」と笑い、再び揚げ物の列へと戻っていった。
駅の向こうのさなアパートでの暮らしは、決して贅沢ではないけれど、にあの元夫がいないというだけで、朝の空気の清々しさはまるで別世界だった。
莉子とは、毎週曜に必ず会っている。
元義母が駅の改札まで莉子を送り届けてくれ、私と息子たちと緒に昼をべ、買い物をし、学の来事を聞く。唱団のしい課題曲のメロディも、算数のテストの点数も、すべて私が聞いている。
むが別々になったからといって、私たちが紡いできた族の絆が消えるわけではない。私はそのことを、々ので証し続けていた。
莉子の履いている靴のかかとは、もうくなってはいなかった。元義母が、デパートでしい靴を何も買い揃えてくれたのだと、莉子が嬉しそうに教えてくれた。
翌の、母の。
莉子がで、私のアパートへとやってきた。